直接民主制で名高いスイスの国民投票で可決された「モスク(イスラム教の礼拝堂)にミナレット(塔)を建造してはならない」との憲法改正が英米メディアの批判にさらされている。 移民によるスイスの“イスラム化”防止をうたう右派政党主導の改正骨子が、欧州で次々と表面化する民族主義のあからさまな発露にほかならないとして嫌悪感を呼んだためだ。ただ、移民問題は欧州各国に共通した課題で、スイスが下した決断が他国の排他主義者を勢い付かせることにもなりかねず、「文明の衝突」の波紋は広がっている。 「宗教的な偏狭さから立憲制を守るという名目で、スイスの有権者は偏狭さを選択した。自己矛盾を上回る(立憲制への)誹謗(ひぼう)である」 11月30日付の英紙タイムズ社説(電子版)は、スイスの憲法改正を「信教の自由への攻撃」と糾弾した。反ファシズムと多文化主義を掲げる英国各紙は、ことのほか強い論調で問題を批判的に論じている。