(白水社・4620円) ◇対独戦史料にソ連軍崩壊のさまを読む 戦争の全体像を俯瞰(ふかん)的に述べるのは難しく、それが第二次世界大戦であれば、なおさらだろう。ただ、二つの大戦にはさまれた時期、大国の間でさかんに議論されていた問題が海軍軍縮だったことを考えれば、海洋での支配をめぐる、日独伊の同盟国側と英米など連合国側との争いこそが、世界大戦の決定的な要因だったといえるのではないだろうか。 とはいえ、日本は1937年7月から中国との戦争を始め、ドイツもまた41年6月からソ連と戦っていた。日本とドイツが相手とした中国とソ連は、ともに退却に適した広大な大陸の後背地をもち、ともに連合国からの補給を受け、甚大な犠牲を出しつつも、陸からの抗戦を続けられる国だった。とすれば、海(空を含む)の戦いを陸の戦いが支えていたともいえるだろう。本書の描く、独ソ戦下を生きた赤軍兵士の物語が、ここに深い意味をもって迫っ