不死細胞ヒーラ ―ヘンリエッタ・ラックスの永遠(とわ)なる人生 [著]レベッカ・スクルート[評者]辻篤子(本社論説委員)[掲載]2011年7月17日著者:レベッカ・スクルート 出版社:講談社 価格:¥ 2,940 ■細胞は誰のものか、「彼女」と家族追う 「ヒーラ」という名前に全く覚えがなくても、私たちの誰もがその恩恵を被っていることはほぼ間違いない。 ヒーラ細胞は、世界で初めて培養に成功したヒト細胞で、がんや肝炎、遺伝子の研究からインフルエンザの薬の開発まで、20世紀後半以降の生命科学と医学の飛躍的な進歩を支えてきた。 本書は、その細胞をめぐる、科学と人と社会、とりわけ、人種や貧困などの根深い問題を抱えた米国社会の驚くべき物語である。 そのエッセンスは、当時16歳だった著者の心をとらえた、地域短大の生物学の授業での教官の言葉に集約されるだろう。 彼は「ヒーラ細胞は、過去100年に医学界で