ブレイディー氏は今も、フィッシャーが頭角を現したマーシャル・チェスクラブに所属する。壁には、盤に向かうフィッシャーの写真が残る=ニューヨーク、中井大助撮影 米国出身のチェス元世界王者、ボビー・フィッシャーが64歳で亡くなって5年。絶対的な強さを誇りながら、忽然(こつぜん)と姿を消した人生は今も世界の関心を集める。その人物像に迫ろうと、少年時代から見続けてきたフランク・ブレイディー氏(78)が膨大な資料を使って伝記を書き上げ、新たな光をあてた。和訳『完全なるチェス 天才ボビー・フィッシャーの生涯』(文芸春秋)が出版されたのを機に、ブレイディー氏に話を聞いた。 2人が初めて会ったのは約60年前、チェス大会の会場。以来、活躍を間近で見守った。1965年にはフィッシャーの初めての半生記を出版。72年に世界制覇し、30年続いたソ連の覇権に終止符を打つと全面改訂もした。一方、半生記出版のころから関係は