三重県名張市で52年前に起きた名張毒ブドウ酒事件を検証し、死刑囚とその家族を描いた本が、岩波書店から出版された。取材と執筆の中心だった元東海テレビカメラマンで愛知県尾張旭市に住む門脇康郎さん(69)は「裁判員裁判で、誰もが死刑判決を出す立場になる可能性がある。あなたは、この事件をどう判断しますか」と問いかける。 門脇さんら東海テレビ取材班が出版した本は「名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の半世紀」。1961年3月28日夜、名張市と奈良県の境にある葛尾(くずお)地区の地区懇親会で、ブドウ酒を飲んだ女性17人が中毒を起こし、5人が死亡した事件だ。 奥西勝死刑囚(87)が農薬ニッカリンTを混ぜたと自白したが、その後否認に転じた。津地裁は無罪を言い渡したが、名古屋高裁で死刑判決が出て、72年に最高裁で確定。奥西死刑囚と弁護団は再審を求めている。 門脇さんが事件を追うようになったのは78年。「とっくに死刑が