2001年9月11日の米中枢同時テロ後、パキスタンでは数千人以上といわれる住民が突然、家族の前から姿を消した。その多くは、パキスタン当局が、米国の「テロとの戦い」への協力姿勢を示すため、連れ去った可能性が高いとされる。身柄を米側に引き渡され、キューバやアフガニスタンの米軍基地内に収容されていることが確認されたケースもある。愛する人を突如失った家族は「9・11さえなければ、こんな経験をすることはなかった」と怒りをこらえ、帰りを待っている。(ラワルピンディ=パキスタン北東部 田北真樹子) 「夫がいつ帰ってきてもいいように、家の玄関の鍵はかけていません」 アムナ・ジャンジュアさん(47)は、大きな目を潤ませた。当時45歳の夫マスードさんがいつものように家を出て、そのまま姿を消したのは05年7月30日。知人とバスで北西部ペシャワルに向かう途中、治安当局者とみられる男たちにバスから降ろされて以降、音