1 はじめに どこかの書評[*]で『ハッカー宣言』なる本が出版されていることに気がついた。そこで、買ってみた。これがまあ、私にとっては困った本だった。 [*] その書評を発見しました。ありがとうGoogle! まず、著者であるマッケンジー・ワークは、『ハッカー宣言』を『共産党宣言』 のパロディとして書こうとしているわけで、「階級」とか「剰余」とか「搾取」とか、 そういうイヤンな用語がいっぱい出てくる。いや、 これは翻訳した金田智之さんの趣味なのかもしれないけど。いずれにせよ、 「抽象的階級であるハッカーは、 抑圧され搾取されている生産階級と連合しながら 支配階級と闘うのだ!」 みたいなことを、なんとなくにでも期待されているのであるとすれば、 ハッカーの皆さんは「わぁ、えんがちょ!」 と言いながら逃げていってしまうと確信する。 [043] 長い目で見れば、 ハッカー階級の利害は抽象化の進展に