閉塞感(へいそくかん)漂う時代の中で勇ましいことばが人々をひきつける中、いまや記憶のかなたの古典となったマルクス、エンゲルスの「共産党宣言」を現代語訳した人がいる。大阪のグラフィックデザイン会社社長、北口裕康さん(48)。学者でも党員でも翻訳家でもない立場で「高校生にもわかるように」と言葉を探していくと、意外にも、今の時代がわかりやすく見えてきたという。 翻訳を始めたのは、リーマン・ショックの余波が続いていた2009年秋。「資本主義の終焉(しゅうえん)」という言葉が飛び交っていた。だったら、新しい世界を作る手がかりの一つとして「共産党宣言」を訳してみたらどうだろう。初めて読む古典に手を伸ばした。 意識したのは、当たり前に使われてきた小難しい単語に頼らず、いまを生きる自分が納得できるわかりやすい言葉を探すこと。 「ブルジョア」は「金持ち組」とした。「プロレタリア」は「やとわれ組」。社員だけで