(国書刊行会・4725円) ◇思念により現実と結ばれる「夢」探究の書 著者のエルヴェ・ド・サン=ドニ侯爵(1822−1892)はコレージュ・ド・フランス教授にまで上りつめた十九世紀の高名な中国学者だが、その一方で徹底した夢の研究を行った「夢学者」としても知られる。きっかけは十三歳のときにつけはじめた夢日記だった。 「夜毎(ごと)の夢を記録し始めたとき、私は十三歳であった。その記録は、彩色された絵入りのノート二十二冊に及び、千九百四十六夜、つまり五年以上の記録となっている」 最初、日記には欠落があり、夢を覚えていない夜もあったが、日を追うごとに欠落はなくなり、百七十九夜目には完全な夢の記述に成功する。そして、夢を記憶するには夢を見ていると意識していることが不可欠だと悟る。 この意識夢の体得により、夢の三つの原理が明らかになってくる。第一は夢のない眠りはないということ。第二は見たことのあるもの