(金融財政事情研究会・1890円) ◇GDPを超える「豊かさの指標」を求めた挑戦 自動車を運転する場面を考えてみよう。速度メーターがあり、ガソリン残量メーターがあり、走行距離メーターがある。さらに室温を示すメーターも。運転者は、それらのメーターそれぞれに目を配りつつ運転を続ける。すべてのメーターを集計した一つの数値があるわけではないし、かりにそんな数値があったとしても、それに頼って運転などしたら危険きわまりないことになる。 ところが経済の領域においては、それと似たことが実際に行われているのではないのか。GDP(国内総生産)という一つの集計値が、他のもろもろの領域の状況をまとめて示す、まことに便利な数値としてもてはやされてきたのではないのか。サルコジ前フランス大統領がどう考えたのかは、実のところ定かではないが、二〇〇八年二月、彼はGDPに代わる生活の豊かさを表現できる指標を作成すべく、委員会