思いが届かぬ鬱憤を、相手の心身を傷つけることで晴らしたのか。静岡県と東京都で3、4月、交際を断られた女性に薬品を使って大けがを負わせとして、男が相次いで逮捕された。いずれも職務上の立場や知識を悪用したとみられる。同様の犯罪は、インドなどアジアの一部で「アシッドアタック」と呼ばれて社会問題化。専門家は「ゆがんだ自己愛に満ちた卑劣な犯行だ」と指摘する。■交際を断られて 昨年12月5日、静岡県小山町にある炭素製品メーカーの研究施設で働く40代の女性は帰宅しようと、室内履きからスニーカーに履き替えたところ、左の靴の中に違和感を覚えた。 「湿っているな…」 車で家路についたが、間もなくかゆみが襲い、約20分後には激痛に変わった。左足の指は骨まで壊疽(えそ)を起こし、指先を5本とも切り取らざるを得なかった。靴から検出されたのは、猛毒のフッ化水素酸だった。 女性は同10月にもブーツを履いた後に右足を痛め