ブックマーク / kasasora.hatenablog.com (3)

  • 格好悪いことの効用 - 傘をひらいて、空を

    私はいろんな花粉とハウスダストのアレルギーを持っているので、一年中鼻をぐずぐずいわせている。将来を左右する面接の最中でも、大勢を前にしたプレゼンテーションの山場でも、すてきな男の人とはじめてデートするときでも。しかも汗っかきなので、いわば二重苦だ。鼻炎でも汗っかきでも、べつに死なない。深刻な苦痛もない。単に格好悪いだけだ。 でもそれってつらいよ、しょうがないからいつでもどこでも鼻かんじゃうんだけどさあ、と私は言った。彼はたいへんセンシティブな腸を持っているから、きっとわかってくれるだろうと思ったのだ。案の定、彼は、 「わかるよ。とてもつらい。人に相談しても笑われるだけだし、しかも解決しない。思春期には親を呪った」 と言った。 「なにしろデートってやたらと腹にものを入れるじゃないか。大人になったらデートイコールめし、といってもいい。つまりなんというか、前半戦としてはね。しかも長い。頻繁に席を

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    osyamyun
    osyamyun 2013/08/08
  • だめって言って - 傘をひらいて、空を

    後輩はかぶと虫を観察する小学生のようにしげしげと私をながめ、マキノさんが弱ってる、とつぶやいた。なぜわかると問うと、しおらしい、と即答する。憎たらしい。 実際のところ私は弱っていた。最終局面でひっくり返された仕事のかたまりを目の前にしてすべきことがわからないほど未熟ではないにせよ、すべきことに含まれる判断の回数と作業の量にうろたえないほど訓練されてもいなかった。私はそれを計測し、朝までにはなんとかなるかもしれない、と思う。同じ案件にアサインされている先輩を途中で帰すこともできるんじゃないかと思う。 その先輩が、珍しい、と口をはさんで声を一オクターブ上げ、ねぇミホちゃん助けてぇ、と続ける。当年とって四十二のごつい中年にして心にオカマを持つ男であるところの彼は、自称女子力が強いために甘えることを躊躇しない。もうだめぇ、あんな無茶ぶりされて、マキノさんもあたしも死んじゃう。 イケタニさんもマキノ

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    osyamyun
    osyamyun 2013/02/20
  • 涙袋 - 傘をひらいて、空を

    カフェでを読んでいて、隣のテーブルの女性が落ちつかない様子をしていることに気づいた。 彼女はおずおずとあたりを見回し、ウェイトレスを目で追い、でも声はかけずに、窓の外を見たりうつむいたりしていた。見たところ四十代半ば、少し面やつれしているけれども、ごく清潔な印象の、端正な人だった。私と同じように、彼女もひとりだった。 またしばらくを読んでいると、隣のテーブルから、あの、と声が聞こえた。隣の女性が立ちあがってウェイトレスを呼びとめたのだ。ウェイトレスははたちくらいの女の子で、とても愛想よく、はい、と彼女を見あげた。ずいぶんと小柄な人だった。 コーヒーはまだでしょうか、と彼女は言った。ひどく遠慮がちな、ほとんどおびえているような口調だった。ウェイトレスは、は、というような音声を発し、目をくるりと動かし、一度息を吸ってから頭をさげた。 私はさきほどべつの店員と交代したのです。私たちはお客さま

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    osyamyun
    osyamyun 2010/10/24
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