涙袋 - 傘をひらいて、空を

カフェで本を読んでいて、隣のテーブルの女性が落ちつかない様子をしていることに気づいた。 彼女はおずおずとあたりを見回し、ウェイトレスを目で追い、でも声はかけずに、窓の外を見たりうつむいたりしていた。見たところ四十代半ば、少し面やつれしているけれども、ごく清潔な印象の、端正な人だった。私と同じように、彼女もひとりだった。 またしばらく本を読んでいると、隣のテーブルから、あの、と声が聞こえた。隣の女性が立ちあがってウェイトレスを呼びとめたのだ。ウェイトレスははたちくらいの女の子で、とても愛想よく、はい、と彼女を見あげた。ずいぶんと小柄な人だった。 コーヒーはまだでしょうか、と彼女は言った。ひどく遠慮がちな、ほとんどおびえているような口調だった。ウェイトレスは、は、というような音声を発し、目をくるりと動かし、一度息を吸ってから頭をさげた。 私はさきほどべつの店員と交代したのです。私たちはお客さま

[mactkg]

よい

[nui81]

2回読んだ。

[SeiSaguru]

いいな…

[stj064]

"泣くべきときに泣かないで長いことすごすと、涙でいっぱいの袋みたいになってしまう。"

[mats3003]

タンブラーをブクマするのは嫌いなので、元文章に敬意を表してこちらをブクマ。世の中のごめんなさいって全員に均等にいきわたってないよね。

[joruri]

文章が素敵。

[sabro]

ずっと他人に謝ってもらえなかったAさんは、大きくなってから、周りの人間が素直に謝ることが出来ないほど程度の低い人間ばかりであったことに気づき、ひどく傲慢になったのであった

[amaria]

情景が目に浮かぶ。すてきな文章。

[elve]

こっちか

[kagakaoru]

お代はけっこうですので、もしおいやでなければ、今からでも私たちのコーヒーを飲んでいただきたいのですが、いかがでしょうか。

[kazu--n]

こういう話は大好き

[june29]

優しいお話。どうもありがとう。

[gracenote27]

女性はごめんなさい、ごめんなさいと繰りかえし、それからようやく言った。私、いやで泣いたんじゃないんです、私、うれしかったんです、ぜんぜんたいしたことじゃないのに、ちゃんと謝ってくれて、私なんかに。

[spica]

珈琲の注文を忘れられた女性客に、店員が丁寧な詫びを述べ珈琲を運んだところ、女性客が滂沱の涙。女性客の心情なんて本当は判らないが、筆者の分析に、繊細さと優しさを感じた。http://twitter.com/cheebow/status/11885168285 KU。

[escape_artist]

現実感のない話だけど、寓話と思って読んだ。

[kkbt2]

「にっこり笑いかけようとして失敗した。もっとたくさん泣いてしまった」「この人は長いこと、ちゃんと謝ってもらったことがなかったのだ。何か不当な目に遭っても、痛い思いをしても、相手は彼女に謝らなかった」