(3)今も満たされない中国人の心 1976年の毛沢東の死により「毛教の啓示」は突然消え去り、10年間続いた恐怖の「政治ゲーム」は終わりを告げた。子供たちは「心から信じていたもの」を一瞬にして失った。しかし、中国人が実際に失ったものは、それだけではない。 過去50年以上にわたる共産党の支配は、一般庶民の心をずたずたにしてしまった。その「心の傷」はいまだ癒やされていない。その「心の隙間」はいまだ満たされていない。過去50年間の中国人の「心」の変遷を検証してみたい。 (イ)中華教による「心の救い」 一部の少数民族を除けば、中国には「一神教」型の「神」は存在し得ない。大部分の中国人にとって「唯一絶対神」は、彼らの五感をはるかに超えた抽象的な存在であり、容易にはなじめなかったに違いない。 漢民族は「神との契約」や「最後の審判」による「心の救い」を信ずるには、あまりにも現実的な民族である。それでは、中