この本は、私が高校時代に将来は日本語の研究をしようかと思いたったきっかけになった2冊の書物のうちのひとつです。もう1冊は、金田一京助編『明解国語辞典』(現在の『新明解国語辞典』の前身)なのですが、それは辞書なのでまた別の機会にお話しするとして、ここでは、この『象は鼻が長い』について紹介してみます。 『象は鼻が長い』は1960年に、くろしお出版から刊行されたもので、もう半世紀も前の書物ですが、まだその中で述べられていることは日本語研究の中で解明されていないことも多いのです。具体的にどんなことがかいてあるのか、ちょっと見てみましょう。 日本語には、「象は鼻が長い」や「日本は温泉が多い」など、「○○は××が……」のように二重に主語があるように見える文が多くあります。また、主語だけでなく、「この本は、父が買ってくれました」の「この本は」のように「買う」という動詞の目的語が「は」で示されているように