司馬遼太郎先生の『城塞』は関ヶ原の戦いから14年後の話。 大坂の陣で徳川家が豊臣家を滅ぼす過程を描いた作品である。 滅びに向かっていく物語の性質からか、『城塞』は全編通じて暗い雰囲気が漂っている。 徳川家康が「陰湿」という言葉では言い表せないほどの詐謀の限りを尽くして豊臣家を滅ぼしにかかる中、死に花を咲かせるかのように武勇を示す真田幸村の姿が印象的であった。 そして真田幸村や後藤又兵衛のような優秀な武将がどんなに献策しても採用しようとしない豊臣首脳陣の愚かさにも怒りを覚えた。 もし今、 「自分自身は優秀だと思っているのに会社では報われていない」 などと不満を持っている人がいたとして、その人が『城塞』を読んだなら、無能な首脳陣に振り回され、どんなに献策しても全く報われない様子にシンパシーを抱いてしまうかもしれない。 『城塞』には、同じ司馬遼太郎作品の『竜馬がゆく』にあるような明るい雰囲気はな