渋澤 私は明治・大正期の実業家である渋沢栄一の玄孫(孫の孫)として生を受けました。 2010年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」は、三菱財閥の創始者・岩崎弥太郎の視点で龍馬を描いていますが、渋沢栄一は、実業界で弥太郎の最大のライバルだったと言われる人物です。 生涯に500の会社を作り、600の教育福祉事業に携わった渋沢栄一の業績の1つに、約140年前に創業された「第一国立銀行」(民間経営)があります。 この銀行は、恐らく日本で初めての公募増資も実施しましたが、当時の「ベンチャービジネス」だった銀行を社会に説明し、資金を集めるために栄一が考えたのは、「銀行とは大きな河のようなものだ」という例えでした。 「銀行に集まってこないカネは溝に溜まっている水、ぽたぽたと垂れている『滴』と変わらない。せっかく人を利し、国を富ませる能力があっても、その効果はあらわれない」と訴えたのです。 「滴」には物を動かす力