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ブックマーク / medt00lz.s59.xrea.com (6)

  • 学問の舞台設定 - レジデント初期研修用資料

    しっかりした地盤なしで成立する建物がないように、専門家が「学」を立ち上げるためには、 専門知識が実際に役立つための舞台設定が欠かせない。 砂漠戦に強い将軍がいたとして、その人が単純に「強い」という理由だけで艦隊を率いる立場に抜擢されても、 たぶん勝てない。将軍の「強さ」というのは、あくまでも砂漠という舞台があってこそ成り立つもので、 舞台が変わって、戦いのルールが変われば、その人がいくら名将であったとしても、その力を発揮することは難しい。 将軍の「強さ」、専門家の「専門性」みたいなものは、だから特定の舞台設定とは不可分なもので、 自らの知識を役立てるための舞台を定義できない学問は、それがどれだけ壮大な知識と技量とを集積していても、 肝心なところで役に立たない。 基礎のない建物はありえない 何か建物を造るなんてことを考えたとき、「基礎を作る」人達と、基礎の上に何かを立てる人達とは、 考えかた

  • 量産型はダテじゃない - レジデント初期研修用資料

    レジデント初期研修用資料 引っ越し前の旧blogです。新しいアドレスは http://medt00lz.s59.xrea.com/wp/ になります 昔から救急外来という場所が好き。怖いし疲れるし、 最近は、いろんな人から文句言われたり訴えられたり、 ろくなことが起きない場所なんだけれど、それでもやっぱり救急が好き。 リスク回避の手段を前から考えてる。リスク管理の問題さえ解決できれば、 この場所にはまだまだ、昔みたいな賑わいが戻ってくるだけの楽しさがあるはずだから。 最初の頃は、技術の向上それ自体がゴールだと思っていた。 自分なんかよりもはるかに高い技術を持った人達が、次々と刺されて現場を去っていくのを見て、 大事なのは技術じゃなくて、むしろ交渉能力なんだと思った。 交渉のやりかたとか、人質交渉人のマニュアルとか、ちょっと外れて新興宗教の洗脳手法とか、 とにかく「交渉」に関係することをあれ

  • 機械親和的な問題定義言語 - レジデント初期研修用資料

    レジデント初期研修用資料 引っ越し前の旧blogです。新しいアドレスは http://medt00lz.s59.xrea.com/wp/ になります 正しい問いは答えを含んでいる たとえば「このだるい身体を何とかして下さい」という問いには誰も 答えを用意できないけれど、「40代やせ型女性。半年前からの動悸、体重減少、 発汗。診断は?」なんて問われれば、国家試験前の学生ならば 10人が10人、「甲状腺機能亢進症」なんて答えを返す。 google 先生なんかはこのあたりもう少し優秀で、同じ単語を打ち込んで検索すると、 糖尿病とか、過敏性腸症候群とか、拒症、癌なんか、他の鑑別診断も引っ張れたりする。 たぶん、世の中で「技術者」と呼ばれる人がやっていることの半分は、 問題を定義することで、残りの半分は問題を解決すること。 問題をより深く追求したり、あるいは技術をもっと先に進めるのは、 どちらかと

  • レジデント初期研修用資料: 安全工学と技術の癌化

    レジデント初期研修用資料 引っ越し前の旧blogです。新しいアドレスは http://medt00lz.s59.xrea.com/wp/ になります 技術が成熟していくと、技術それ自体が生み出す富よりも、 その技術に対する間違った期待感とか、技術者の名声に対する 盲目的な信頼なんかを利用した商売のほうが、圧倒的に大きな利益を生むようになる。 ノイズがシグナルを駆逐する 「たらいまわし」なんて言葉が生まれた大昔。夜間に救急外来を開いている病院なんて ほんの一部で、救急当直は戦場のような騒ぎ。一晩たって朝日拝んで、 気がついたら白衣血まみれだったりして。 就職したのは10年ぐらい前。この頃には病院も大きくなっていたけれど、 救急の現場にはまだまだ人が足りなくて、夜中になっても患者さんが列を作った。 救急に来る患者さん達は全てが「物」。みんな具合の悪い人ばかりで、 待合室で人が亡くなったり、診

  • 寝たきりの人にとって自然とは何か - レジデント初期研修用資料

    レジデント初期研修用資料 引っ越し前の旧blogです。新しいアドレスは http://medt00lz.s59.xrea.com/wp/ になります 痴呆が進んでしまった人というのは、事が事として認識できなくなってしまったり、 あるいは嚥下障害がひどくなってむせ込んでしまったりして、事が口から取れなくなる。 老健施設では責任問題になってしまうから、事ができない人に対して 「何もしない」という選択はとれない。何かしないといけないから、 こんな人は「何とかして下さい」という依頼で病院にやってくる。 老衰の人、特に90歳にもなるような人というのは、事をしないだけで、基的には元気。 病院としては、病院内で感染症を拾う前に何とか返したいのだけれど、 「何とかする」まで施設は引き取ろうとしない。 家族に相談しても、答えは同じ。「何とかして下さい」。 売り言葉には買い言葉。 結局こんな人には

  • レジデント初期研修用資料 交渉の技術がきかない人

    レジデント初期研修用資料 引っ越し前の旧blogです。新しいアドレスは http://medt00lz.s59.xrea.com/wp/ になります 無重力では歩けない 自由は何も生まない。 重力が無ければ、人は立てないし、歩けない。 重力や地面といった制限の無い、無重力の空間というのはもっとも 自由な状態だけれど、この空間におかれた身体は、「歩行という動作」を発見することができない。 動作というのは、中枢神経系が創作するものではなく、「身体」と「環境」との関係の中から、 中枢神経が発見するものだ。 地面を移動するには、どんな動作が最適なのか。 自由な状態、無限に近い動作の選択肢の中から、脳が「歩く」という動作を生み出すのは困難を極める。 地面は、重力という形で身体に「不自由さ」を付与し、 その結果として身体は「歩行」という動作を発見する。 身体は自分の意志で歩行しているのではなく、地面と

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