オーシャン・ヴオン著 『地上で僕らはつかの間きらめく』 オーシャン・ヴオンは1988年ホーチミン生まれ。幼少期に母、祖母などとともにアメリカ合衆国に移住し、大学に進むとベン・ラーナーに指導を受けた。2017年にはT・S・エリット賞、19年には「俗に天才賞とも呼ばれる」マッカーサー奨学金を得るなど詩人として高く評価されている。本作は2019年に発表されたヴオン初の長篇小説である。 著者略歴から入ったのは、『地上で僕らはつかの間きらめく』が母への手紙という形式で書かれた自伝的小説だからだ。この作品はそのモチーフだけを聞けばありがちなものと受取る人もいるかもしれない。 まずなんといっても、アメリカ文学にとってお馴染みの移民文学である。一家は揃って英語が話せなかったが、学校に通う「僕」は英語を身につけていく。母に読み書きを教えようとしても年をとって覚えるのがつらいとつれない対応であるばかりか、暴力