彼女はアウトドア用の折りたたみ椅子に座っていた。私は彼女に会釈してコンクリートブロックに腰をおろした。そこは河川敷の中でも高い確率で複数の猫と遭遇できる場所だった。私はそこでさわらせてくれる猫をさわり、さわらせてくれない猫をながめてぼんやりする。その結果、気の進まない会食をとりやめたこともある。 私は直前のキャンセルはすべきでないと考えており、気が進まなくても約束があれば行った。断るのはそのあとだった。けれどそのときはつくづくいやになってしまったのだ。その人のメールからは一度会っただけの私に対するよくわからない幻想が手脂みたいににじみ出ていた。 指先の動きで猫の気を引いて、病気になってもいいかなと私はたずねた。友だちがね、そんなの病気になっちゃえばいいんだって言うの、いいかな。猫は私に何の関心も示さなかった。私はなんだか安心して、申し訳ありません、風邪をひいてしまったようです、と書き送った