Chapter 4 ブレトン・ウッズ体制とは何だったか 4 そしてホワイトは共産党シンパ ここで主人公たちのプロフィールを、もう少し彫りの深いものにしておくことにしよう。 前節でわれわれが「敗軍の将」と呼んだケインズの場合、大層なドイツ贔屓(びいき)だったことが知られている。 ダンケルクから屈辱の撤退(1940年5〜6月)をして以来、欧州大陸はヒトラーの手に落ちていた。ドイツ空軍にロンドンを焼かれ、海軍には輸送路を寸断され、41年6月に独ソ戦が始まるまでの英国は孤立無援、飢餓線上をさまよっていた。絶望的な状況にありながら、ケインズがそれでもドイツ贔屓だったとは、にわかに信じられない話であろう。 ドイツとの戦いで、最も損害を被りながらも耐えたのは、英国人である。そしてその事実は対米関係において正当に反映されるべきである――。ブレトン・ウッズへと連なる一連の交渉へ臨むに際し、ケインズがこういう