マンハッタン計画を主導した理論物理学・オッペンハイマーは、「原爆の父」と呼ばれています。それゆえ大戦終結後、ヒロシマ・ナガサキの責任を学者として一身に背負うことになりますが、ただ、そこには確実に「ある意図」が働いていました。可能な限りの資料をもとに、政治に翻弄、欺かれた科学者の実像に迫り、これまでのオッペンハイマー像を一変させるとともに、原爆開発の真の責任の所在を問い直した『ロバート・オッペンハイマー』。「序」の一部を公開します。 序 1 オッペンハイマーを知っているか? 『ジュラシック・パーク』という映画がある。これまでに数百万の人が見た映画だろう。その中にロバート・オッペンハイマーの肖像写真が大写しになる所がある。恐竜パークを管理するコンピューターのモニター・スクリーンの向かって左側に貼りつけられている。オッペンハイマーの顔のすぐ上には原爆のキノコ雲のマンガも貼ってある。そのコンピュー