少し面白かったので紹介したい。政治学者である著者は大著『ゾミア ― 脱国家の世界史』でインドシナ半島内陸部に住む、特定の国家に支配されない「野蛮人」達に注目し、我々の文明観・歴史観を見直す。彼らは文明から取り残された「未開人」では決してなく、国家の支配と集約的労働から意図的に逃れた人々なのである。国家の支配の及ばない辺境には非国家民が住む。現代では少数派になった彼らを国家側は未開人、或いは文明に対立する「野蛮人」と見なし、実際は多様な彼らを一括して何々人 (例えば匈奴、フン、アムル人) などと呼んできた。そして彼らに多彩な文化・歴史的背景が有ることを僕たちはあまり知らない。「歴史」は常に国家民、農耕民、「文明人」の側から書かれ、そして勝者によって不都合な記述は焼かれてきた。『書物の破壊の世界史』によれば書物の紛失の60%は何らかの故意の破壊である(まだ読み終っていないが、いずれ紹介したい)