前回は、哲学は宗教ではない、思想ではない、ということを書きましたが、今回は、『哲学の教科書』(講談社学術文庫)に倣って「哲学は科学ではない」と「哲学は文学ではない」ことをお話ししようと思います。 さて、「哲学は科学ではない」ことは当たり前ですが、こう堂々と宣言すると、多くの人を苛立たせるようです。おもしろいことに、「哲学」とか「哲学者」という言葉は、もうずっと前から脳死状態であると思い込んでいたのに、依然としてその言葉に対するプラスの価値は消えていない。 だから、私が哲学をしていると言うと、「お前はくだらない私小説的哲学まがいの本を書いているだけで、哲学なんかしていない!」という罵声が飛んでくる。仕方ないので、肩書を「哲学者」と書くと、「お前は哲学者なんかじゃない! ただの偏屈ジジイだ!」というお叱りを受けるのです。そのたびに、わが国民はまだ「哲学」や「哲学者」に期待しているんだなあ、と感
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