ブックマーク / kasasora.hatenablog.com (9)

  • さみしいと人はおかしくなるんだよ - 傘をひらいて、空を

    疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。そのために人と人が会う機会があきらかに減った。わたしはそれに危機感をおぼえ、人とのコミュニケーションの場や出会いの場を工夫して増やした。 友人が減ってもかまわない人もあるのだろうが、わたしはそうではない。若いころから意識的にさまざまな形式で親しい人をつくり(形式というのは友人とか恋人とか、そういうのです)、その人々によくするように心がけ、長期的にはそれが返ってくることを期待してやってきた。わたしにとってわたしを大切にしてくれる他者は運命のように与えられるものではなく、また一度得たらずっと持っていられるものでもなく、自分から獲得しに行き、相互に定期的にその必要性を判断するもので、だから原則として時が経てば減るものだ。 わたしにこのような感覚が芽生えたのは十九歳のときである。それまでは環境によって人間関係を与えられるような感

    さみしいと人はおかしくなるんだよ - 傘をひらいて、空を
    pecchin
    pecchin 2022/08/10
    タイムリーな話題だ
  • あの男の恋愛感情などまったくあてにしていない - 傘をひらいて、空を

    疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。それがきっかけでわたしは、つきあいはじめて間もない男と同棲し、今でも一緒に暮らしている。 わたしには妊娠する能力がない。成人する前にそれがあきらかになったたために、わたしの人生の戦略はわりと極端なものになった。 子どもが欲しいとか欲しくないとか考える前の段階で「あなたにはできません」と宣言されたので、「それならそれで楽しくやろう」と思った。同い年の女たちが「きっと結婚してたぶん子どもを産んでやっぱり仕事も続けて」などと具体性と取捨選択に欠く夢想を将来設計と呼んでいた大学生のころから、わたしは「いわゆる家庭に人生の主軸を置かない」と決めていた。 最初から子のない人生を送ると決めている(わたしの場合はわかっている)大人は、同居したとしても家庭に力を入れることにはなるまい。わたしは他人の分まで家事をしようなどという気はないので

    あの男の恋愛感情などまったくあてにしていない - 傘をひらいて、空を
    pecchin
    pecchin 2022/04/27
    向こうは同じこと思ってなかった
  • あの女の恋愛感情を利用していい生活をしてやろう - 傘をひらいて、空を

    疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。それがきっかけで僕と彼女は一緒に暮らし始めたのだけれど、この生活が気に入りすぎて疫病の流行が終わってもやめたくない。 つきあって三ヶ月という、恋愛的にいちばん盛り上がっているタイミングで同居したから、すぐ破綻してもおかしくないと思っていた。なにしろ僕はすぐ飽きちゃうのだ。女の子と半年以上つきあったことがない。 僕の個人的な感覚では、同じ相手とのセックスは三回目から十回目がピークで、あとはまああってもなくてもという感じだし、恋愛的な様式としてのデートについては「女の子のドリームを読み取ってサービスするのめんどくせえな」と思う。だから自分は長期的な関係に向いてないのかなあ、なんて思っていたのだけれど、好きな人と生活を共にしてみたら継続したくなったので、向いてなかったのは長期的な関係というより長期的な「恋愛」関係だったみたいだ

    あの女の恋愛感情を利用していい生活をしてやろう - 傘をひらいて、空を
    pecchin
    pecchin 2022/04/20
    うん、多分向こうも同じこと思ってるやつ
  • 牛尾の気持ち - 傘をひらいて、空を

    疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。そのためにリモートワークが定着してしばらく経つ。わたしの勤務先では四月だけほぼフル出社、平素はほぼフルリモートである。 今の新人はリモートワーク以降に入社した。直接顔を合わせる機会が少ないので、うるさいだろうなと思いながらも新入社員によく(リモートでも)声かけをするようにしてきた。するとけっこう愚痴が出る。「自分たちは疫病下の就活で損をした上、新人として得られるものも前年以前よりずっと少ない」という内容の愚痴である。それはまあそうだと思う。 しかし彼らは彼らなりに息を抜いているようだ。「ぶっちゃけ同期とはけっこう集まって飲みに行ってますよ」と言った者もあった。わたしは「そうしなそうしな」と言える立場ではないから、いかにも日人的なあいまいなほほえみの中に「そうしなそうしな」という意思を埋めこんだ。 そのような新人たちの一

    牛尾の気持ち - 傘をひらいて、空を
    pecchin
    pecchin 2022/03/23
    集団の中でなるべく下位にいた方がトクだ、というのはとてもわかるが、それでも劣等感は感じる
  • 強者と強者の恋 - 傘をひらいて、空を

    疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。そのために外で人と事をするのはたいそう不自由になった。夜中まで自由にお酒を飲むといった、かつてありふれていた遊びは、ずいぶん難しいものになった。 しかしそれは「大半の人にとって」という但し書きのつく事象であるようだった。なんとなれば私の目の前にいる女は涼しい顔で繊細な杯をかたむけ、「二軒目までつきあってもらいますから」と言うのだ。疫病前とまるきり同じである。ここはきっと、特段のコネクションと割高な料金をもって疫病前の当たり前の夜を体験させる店なのだ。 彼女は私よりずっと若く、私よりずっと収入が多い。結婚相手はさらに羽振りがよいのだそうで、つまりはたいそう裕福なのだ。たいそう裕福だから私と割り勘で事はしたくないという。それで私はときどき彼女に呼ばれ、飲みいしてふんふんいって帰ってくる係をやっている。 私がのこのこ出か

    強者と強者の恋 - 傘をひらいて、空を
    pecchin
    pecchin 2022/02/23
    くぅ
  • 恋愛なんか好きじゃなかった - 傘をひらいて、空を

    疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。そのために停滞したもののひとつが恋愛活動である。僕らの世代では(少なくとも僕の周囲の同世代の友人の間では)「恋愛したいなら『自然な出会いを待ちたい』などというのは寝言であって、自分から動かないやつにはなにも起きない」という認識が一般的である。恋愛したけりゃ恋愛活動をするものなのだ。 そしてその恋愛活動の多くが停止し、いくらかは強行され、全体に様変わりしたのがこの一年数ヶ月である。 僕は疫病流行が一度落ち着いたところで今の彼女に出会った。そうして彼女が「つきあおうよ。わたしとつきあうと楽しいよ」と言うので即つきあうことにした。その後ふたたび新しく人と会うのが困難に(あるいはためらわれるように)なったので、いわば出会いの滑り込みである。滑り込めたのは彼女の腕力のおかげだ。デート一回目でつきあおうなんて言えないですよ、少なくと

    恋愛なんか好きじゃなかった - 傘をひらいて、空を
    pecchin
    pecchin 2021/12/08
    わかるなぁ、恋愛活動がしたくないから妥協して選んでもらった感あるわ
  • あなたのことは好きじゃなかった - 傘をひらいて、空を

    疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。現在はワクチンがある程度いきわたり、感染者数がかなり減って、みんななんとなくうきうきしている。それでわたしも連休に帰省することにした。 わたしの地元では「東京で働いている娘が来て感染させた」となったら家族にものすごく迷惑がかかりそうで、帰省を控えていた。県の中核都市だから、知らない人もいっぱい歩いていて、娘が帰省したからその親が村八分になるみたいなことはないんだけど、それでもやっぱり、わたしはずっと、自分が生まれた町に帰れなかった。 わたしの生まれた家にはわたしの両親が住んでいる。両親は疫病前から家を売ってマンションに住もうという話をしていて、だからわたしは自分の生まれた家にお別れするつもりで来ていた。妹は県内に住んでいるからしょっちゅうこの家に来ているし、両親にも会っている。そんなわけでわたしだけがちょっとセンチメンタ

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    pecchin
    pecchin 2021/11/04
    いい…
  • おれにスカートを履かせろ - 傘をひらいて、空を

    疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。うちの会社も半分くらいリモートワークになって、だから夏はとくに快適だった。夏場に毎日フルレングスのパンツを(しかもワイドや薄地ではないものを)履くのは、端的に言って苦行である。そのうえパンツの傷みもはげしい。お気に入りであればあるほど着る気になれない。 おれは学生時代、たまにスカートを履いていた。女性装としてではない。メンズファッションとして着ていた。今でも頻度こそ減ったが、時折スカートを履く。なにしろ暑いときにラクだし、かっこいいと思うから。 おれは髭を生やすしスーツも着る。でもスカートも履きたい。男のあっけない腰まわりからすとんと布が落ちるているのは美的にもナイスじゃないか。なにゆえ日ではスカートは男のチョイスではないのか。浴衣なんて実質ワンピースだ。着流しの男を見ろ。ああいう感じのシルエット超いいじゃん。 そうし

    おれにスカートを履かせろ - 傘をひらいて、空を
    pecchin
    pecchin 2021/10/27
    いつも素敵な話をありがとうございます
  • セフレですよ、不倫ですよ、ねえ、最低でしょ - 傘をひらいて、空を

    仕事の都合で別の業種の女性と幾度か会った。弊社の人間が、と彼女は言った。弊社の人間が幾人かマキノさんをお呼びしたいというので、飲み会にいらしてください。 私は出かけていった。私は知らない人にかこまれるのが嫌いではない。知らない人は意味のわからないことをするのでその意味を考えると少し楽しいし、「世の中にはいろいろな人がいる」と思うとなんだか安心する。たいていはその場かぎりだから気も楽だし。 彼らは声と身振りが大きく、話しぶりが流暢で、たいそう親しい者同士みたいな雰囲気を醸し出していた。私を連れてきた女性はあっというまにその場にすっぽりはまりこんだ。私は感心した。彼女は私とふたりのときには同僚たちに対していささかの冷淡さを感じさせる話しかたをしていた。 どちらがほんとうということもあるまい。さっとなじんで、ぱっと出る。そういうことができるのである。人に向ける顔にバリエーションがあるのだ。私は自

    セフレですよ、不倫ですよ、ねえ、最低でしょ - 傘をひらいて、空を
    pecchin
    pecchin 2019/09/18
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