今回は森博達教授の業績を紹介します。先生は,奈良時代の日本語の音韻体系をみごとな推理で解きあかしてしまいました。氏は,また,古代史の永遠のテーマ, 魏史倭人伝に登場する謎の女王,卑弥呼について,定説に重大な疑問を投げかけました。 三部構成でお届けする今回の言語学講座,第1部は,奈良時代の日本語の音韻体系に関するおはなしです。第2部では魏志倭人伝から推測される弥生時代の日本語の音韻に関する研究を紹介。第3部は付録です。卑弥呼に関するわたしの個人的な考察についてです。 第一部 名探偵登場 (森博達先生之快刀乱麻的名推理) 1 前回までのあらすじ 前回は、古代日本においては、母音が a, i, u, e, o の5つではなく、3つ多い a, i1, i2, u, e1, e2, o1, o2 の8つだったと考えられることを説明しました。添字の1を付けたものを甲類、2を付けたものを乙