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ブックマーク / www.ki1tos.com (6)

  • 研究にいちばん役に立つこと - いつか博士になる人へ

    大学院1年目の夏、私は毎日のように先生の部屋に行った。 学会の締め切り間近であせっていた。 「無理に発表する必要はない」 と研究室の人たちは言ってくれた。 でも、他の研究室の同級生たちは発表することが決まっていた。 私もなんとか発表がしたかった。 少しでも研究を進めたくて、毎日先生に指示をもらった。 先生の話をとにかく、ふんふん、わかりました、と言って聞いた。 当は、ちゃんとわかってなかった。 でも何をやればいいか、というのはわかった。 それで十分だった。 余計なことを聞いている時間はなかった。 作業が終わったら、すぐ先生に報告した。 「うん、これなら発表を申し込んでもいいですよ」 という言葉を、私はいつも期待した。 でも先生は、いつも資料をのんびりと見て、期待外れのことを言った。 たとえばある日、先生は、 「この式は、よく見ると面白い形をしてるね」 と言った。 「面白い?」 と私が聞く

    研究にいちばん役に立つこと - いつか博士になる人へ
    peketamin
    peketamin 2021/01/22
  • なんで論文なんか書くのか - いつか博士になる人へ

    私がポスドクになって今の研究室に来たとき、イトウくんという学生がいた。 彼は学部の4年生で、卒業研究をやっていた。 私と彼は研究テーマが似ていたから、よく並んで座って話をした。 キャンパスのイチョウが黄色くなった頃、 「卒研発表までもう3ヶ月しかないです」と、イトウくんが言った。 「やばいね」と私は言った。 人ごとなので、たぶんニヤニヤしていた。 優しい私は、 「そろそろ卒論も書かないといけないね」と、追い打ちをかけようとした。 すると彼は、 「論文は書かなくてもいいです」と言った。 「えっ、そうなの?」 「はい。発表すれば卒業できます」 それを聞いて私は、 「そうなんだ。楽でいいね」と、心からうらやましそうに言った。 イトウくんは、 「そうですね」と、少し困ったように笑った。 このときのことを、私は今でも後悔している。 なんで論文なんか書くのか 私が卒業研究をやりはじめたとき、当時の先生

    なんで論文なんか書くのか - いつか博士になる人へ
    peketamin
    peketamin 2020/11/19
  • 研究で失敗するのが怖い - いつか博士になる人へ

    電車の中で、冷や汗がとまらなくなったことがある。 大学院の卒業間近の頃だ。 その日僕はいつものように一番後ろの車両の隅に立って、スマホで論文を読んでいた。 朝のラッシュは過ぎた後で、電車は空いていた。 窓から射し込んでくる光がまぶしかった。 見ていた論文は、前に一度読んだことがあった。 研究の参考にするために、細かいところを確認するだけのつもりだった。 でもある単語が目に入って、頭が一瞬真っ白になった。 僕はその単語の周りをもう一度ゆっくりと読んだ。 単語の意味を検索して、やっぱり勘違いじゃないとわかったとき、汗が背中をつたっていった。 セーターの下のシャツが濡れていく。 そのとき頭に浮かんでいたのは、先生のあきれたような顔だった。 「君ができるって言ったんでしょう? 残念ですが3月での修了は諦めてください」 想像の中で先生がそう言った。 どうしよう。あんなこと言わなければよかった。失敗し

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    peketamin
    peketamin 2020/10/30
  • 論文を読む理由 - いつか博士になる人へ

    大学へ通う電車の中で、論文を読んでいる人を昔よく見かけた。 その頃まだ学生だった私は、そんな人たちを見つけては、「卒論の時期だな」とか、「ゼミ発表が近いのかもしれない」と、論文読んでる理由を勝手に想像してた。 「なにも電車の中で読まなくてもいいのに」と思った。 その頃の私にとって、論文を読むことは勉強だった。 電車の中で勉強している高校生をみて「たいへんだな」と思う感じ。 でも今の私には、あの人たちの気持ちがわかる気がする。 電車の中で論文読みながら、たまにニヤニヤしてた人たちの気持ちが。 論文が読めない理由 論文を読むことを教えてもらったのは、大学4年のときだった。 卒業研究のために配属された研究室で、週に一度「論文を読む会」があった。 いつも火曜日の夕方に、みんなでせまいミーティングルームに集まった。 毎回、学生の誰かが論文をプリントして配り、タイトルから読んでいく。 英語を一文読んで

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    peketamin
    peketamin 2020/07/03
  • 人は知ってることしか見えない - いつか博士になる人へ

    大学院に入ったばかりの頃、配属された研究室で研修を受けた。 僕は先輩について回って、実験機器を使ってみたり、実験ノートのとり方を教えてもらったりした。 ある日、先輩が先生たちとミーティングをするというので見学させてもらった。 そのときのことは今でもよく覚えている。 最初に、先輩が実験でとれたデータについて説明した。 先輩の堂々とした説明を聞いて、僕はとても感銘を受けた。 ふんふんとうなずきながら、はたして自分はこんなふうに説明できるだろうか(いや、できない)と思っていた。 でも先輩の説明が終わったとき、 「なんか変だね」 と助教さんが言った。そして、 「普通はこうなるはずなんだけど」 と、他のデータとの違いを指摘した。 先輩と僕は他のデータを知らなかったから、そこが変だと気がつかなかった。 なぜこのデータは変なんだろうねと、皆でうんうん考えていると、 「3次元でグラフを描いてみて」 と先生

    人は知ってることしか見えない - いつか博士になる人へ
    peketamin
    peketamin 2020/06/29
  • なぜ博士号をとったのに大学教員にならないのか - いつか博士になる人へ

    春が来て、僕の少ないポスドク(博士研究員)仲間たちがまた何人か大学を去っていった。 一流大学で博士号を取り、一流論文誌に研究を発表した彼らが、それでも大学教員になることをやめた理由はさまざまだ。 お金だったり、子どもだったり、別にやりたいことが見つかったり。 だけどそれぞれの理由の根っこにあるものは、たぶんみんな同じだと僕は思っている。 博士課程を終えた後にいろいろな問題が降りかかってくることなんて、僕たちは博士課程に入る時に十分わかっていた。 給料が低いことも、結婚して子どもを持つことが難しいことも知ってた。 それでも大学教員になりたいと思ってハカセになった。 大学で好きな研究をやること以外に、やりたいことなんて考えられなかった。 それなのに、どうして今さら大学教員になることをあきらめるのか。 お金がない生活に嫌気がさしたから? 運命の人に出会ってしまったから? 自分の天職は他の仕事だっ

    なぜ博士号をとったのに大学教員にならないのか - いつか博士になる人へ
    peketamin
    peketamin 2020/05/22
    博士号もってる人、尊敬するわ
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