交易条件の悪化は企業収益の減少をもたらすという通念がある。交易条件とは、製造業の投入物価と産出物価との比率であり、前者の上昇ペースが後者のそれを上回った時、従って例えば、原材料価格が上昇する中で製品価格への転嫁が進まない時、交易条件は悪化する。それが企業の収益を減少させるというのは、なるほどいかにも分かりやすい理屈であり、仮に「他の条件が一定であれば」これが正しいことは自明である(理屈というより算数の問題)。ところが、「経済のメカニズム」として考えれば、この通念は正しくない。 現実のデータを振り返ってみよう。まず、交易条件には稼働率と反対方向に動くという経験則がある。また、設備投資は稼働率の変動に半年ほど遅れて動く。これも経験則である。更に、企業の収益やキャッシュフローも設備投資をうまく説明する。やはりラグは半年程度であり、従って、稼働率と企業収益・キャッシュフローの動きは、同時、同方向で