明治の文豪、夏目漱石が生まれたのは1867(慶応3)年、没したのは1916(大正5)年です。2016年は没後100年、2017年は生誕150年という年にあたり、漱石のアンドロイド製作が発表されるなど、ゆかりの地でさまざまな催しが企画されています。 漱石といえば『坊っちゃん』『吾輩は猫である』『こゝろ』が有名ですが、小説執筆の他に講演活動をこなした時期があり、1912(大正元)年には講演録『社会と自分』を上梓しました。扱われているテーマは「社会と自己」「仕事と芸術」といった普遍的なものです。それゆえに色あせることなく、現代を生きる私たちに、働くことや、生きることのヒントを、約100年前から教えてくれています。 前段、グローバル化の波が押し寄せた明治時代 明治維新を境界とする近代以前と近代は、日本史のなかでも最大級の転換点です。明治維新とは、産業革命を内発的に成し遂げた資本主義諸国の進出を見た