かつて僕は、戸籍制度に反対する人たちと出会い、家族関係に対するスレた感情もあって、戸籍制度ってやっぱりおかしいかもと思うようになった。実際に戸籍制度と向き合い、その差別(等しくない取り扱いによる社会的不利益)を感受したのは、自分が当事者になったときだった。僕が出会った戸籍制度を維持する圧力は、多くの人が出会うのと同様に、意図的に人を傷つける圧力ではなかった。 たとえば、結婚というパートナーシップの形をとるとき、夫の親や妻の親は、「夫婦別姓だったり戸籍がないことが周囲に分かったら子供がかわいそうだ」「妻が夫の家の家族行事に参加したときに内縁の妻として扱われるのではないか」「戸籍を入れないということは家族関係の責任を放棄するということではないか」などの不安にとりつかれることが、痛いくらいに分かった。それは現実に起こりうることで、親たちはその光景に身がまえる。自分や親しい人たちを守りたいという気