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ブックマーク / d.hatena.ne.jp/kananaka (4)

  • 再発――Répétition de maladie, "FEMME" - kananaka日和

    予兆はあった。下肢へと続くなだらかな起伏、その内で穏やかに蠕動し息づく彼女が、ある日を境に静かな変質を始める。柔軟性を失い年季の入った漬物石のように重たく冷やかに縮かむと、それは少しずつ裂けては痙攣し、やがて雲母(マイカ)のように剥がれ、落ちてゆく。 油断していた。二週間ほど続いていた体調不良、抑に倦怠感、不眠、皮下を線虫が這いずる感覚、レストレスレッグズ*1、その他下半身のみならず全身を襲う各種不快な症状に、心当りはあった*2。にもかかわらず「いやいやまだまだ」の思いが抜けなかったのは何故だろう。 ほんのり汗ばむまぁるいヒカル*3の頭をワシワシしつつ、それらがすべて杞憂であれ、と呪文をかけていたのかもしれない。これまでなんとか完母*4でやり繰りしてきた。確かに手元の育児を開くと、「母乳育児のママにもそろそろ…」の記述が見いだせる。それでも出産から一年や一年半、未だ女の痛みが再開してい

    再発――Répétition de maladie, "FEMME" - kananaka日和
  • あのひとの棲む国。 - kananaka日和

    神無月も半ばを過ぎた頃、小さな包みが我が家に届いた。差出人欄をあらためると、学生時代にお世話になった今は亡きN先生のお連れ合い、S夫人の端正な筆跡が目に入る。茶色の包み紙をほどくと、はたして中から現れたのは、茨木のり子の『歳月』という詩集であった。 『歳月』は、詩人茨木のり子が最愛の夫・三浦安信への想いを綴った詩集である。 伯母は夫に先立たれた一九七五年五月以降、三十一年の長い歳月の間に四十篇近い詩を書き溜めていたが、それらの詩は自分が生きている間には公表したくなかったようである。 何故生きている間に新しい詩集として出版しないのか以前尋ねたことがあるが、一種のラブレターのようなものなので、ちょっと照れくさいのだという答えであった。 ――p128, 宮崎治「Y」の箱, 『歳月』(2007)花神社 詩人の一周忌に合わせ誕生した遺作集のあとがき―「Y」の箱―を読み、私はこの小さな贈り物の意味を理

    あのひとの棲む国。 - kananaka日和
    pita-gora
    pita-gora 2011/01/18
    "彼女のやわらかな感性と、しなやかな気概や志、そして、それらを口にした者にだけふわりと香り立つウィットや羞じらいの一行に、何度励まされてきただろう。"
  • それから光がきた。 - kananaka日和

    2010年12月9日14時33分。 くはっと声にならない声をあげ、カノジョはこのセカイで最初の光を見た。まだ像を結ばぬ瞳を全身の感覚器官で補って、確かに感じとっていた。このセカイの眩(まばゆ)さを、このセカイを充たす音の海を、このセカイに吹く乾いた風を、このセカイに蠢くものの気配を、そしてハハの胎内にいた時に想像もしなかったセカイが、ここに在ることを。 カノジョはもう一度、かはっと小さく咽せ、そうして小さく声をあげてみた。心許ない少しかすれた声で、初めて使う器官の感触を確かめるように。 ワタシはそれを遠くで聞いた。術中の失血量が影響し、血圧が降下し意識が朦朧としていた*1。無影燈の光の中をレーザーメスの白煙と肉を焦がす臭いが立ち、悪心と呼吸困難の中、吾子は苦しくはないかと案じつつも、水底に引き込まれるようにまぶたは重かった。 「そのまま寝ちゃっててもいいよ〜」 若い執刀医*2が、ベテラン看

    それから光がきた。 - kananaka日和
    pita-gora
    pita-gora 2011/01/18
    おめでとうございます^^
  • 春になれば苺を摘みに。 - kananaka日和

    イチゴの旬は十二月だと思い込んでいたのは、今は遠い昔の話。それがクリスマス商戦に向けて、最もイチゴが高値をつけるシーズンだったとも知らずに。実際は春に花が咲き、五月頃収穫というのが春イチゴの来の姿。それが近年は管理されたハウス(促成)栽培により、初春の二月頃から安価に入手できるようになった。 イチゴは品種がとても多い「果物*1」で、佐賀の「さちのか」「さがほのか」、福岡の「あまおう」「とよのか*2」、栃木の「女峰」、この改良新品種として登場した甘味がさらに強く大粒の「とちおとめ*3」、静岡の「章姫(あきひめ)」「紅ほっぺ*4」、奈良の「あすかルビー」、熊の「ひのしずく」、徳島の「あかねっ娘(ももいちご)*5」、普通のイチゴの2〜3倍の大きさの特大粒が特徴の愛知の「アイベリー」、新潟県民に馴染みのある「越後姫*6」など、ネーミング一つとってもローカル色が窺える*7。それだけ消費者の人気の

    春になれば苺を摘みに。 - kananaka日和
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