新型コロナウイルス感染症対策のために、自民党改憲草案で示された緊急事態条項が必要だとの声が聞かれる。しかし、その条項は、内閣に法律と同等の効力を持つ政令の制定権を与えるなど、憲法秩序を一時的に破壊するものだ。感染症対策は、人権と権力分立を保障する憲法の下で、十分な科学的根拠と法的根拠に基づき進めるべきだろう。現在の事態下で、自民党草案の導入を訴えるのは不適切だ。 そもそも、現行憲法は、感染拡大防止に不可欠な外出・営業の制限を禁じていない。現在の感染症法・改正新型インフルエンザ等対策特別措置法で不十分なら、強力な補償・罰則等を伴う新型コロナの特性を踏まえた新たな特措法を作ればよい。