第3回 変奏される「虚構と現実」 さて、第2回最後にでも説明した通り、押井守作品を語る重要なキーワードの一つに「虚構と現実」というものがある。というわけで今回は押井作品において「虚構と現実」がどのように手を変え品を変え変奏されてきたかを見てみたいと思う。 「虚構と現実」の作品への取り入れ方は、大きく分けてふたつある。 ひとつは「虚構と現実」という構造が、物語の大オチに直接関係しているもの。 作品でいうと「紅い眼鏡」『迷宮物件 FILE538』「TalkingHead」「Avalon」がそれに当たる。いずれも「現実=真実」を追い求めることで物語が進行していき、その結果、主人公が信じていた「現実」が実は……という仕掛けの作品だ。オチそのもののサプライズもさることながら、そこへと至るプロセスをどう見せるかがポイントで、そういう意味では実はオチを知っても興趣はあまり削がれない。むしろ、そのほうが押