前編で、マクロ経済学が十分に金融危機を扱ってこなかったと書いた。しかし、マクロ経済学には、金融危機を扱う「バブルの理論」があるではないか、と指摘する読者もいるだろう。「バブル」は日常的に耳にする、良く知られた言葉だ。いわゆるバブルの理論は長い歴史があり、1950年代には成立していた。しかし初期のバブルの理論は今日あまり省みられない。それはなぜだろうか。 初期の理論によれば、バブルは基本的に「無価値な資産」であり、これを誰かが保有することは、基本的には、資源の無駄遣いに過ぎない。すると理論的には、バブルと不況が同時に発生する可能性が高いという帰結が得られる。これがあまりに現実離れしていると受け止められてきたからだ。 言うまでもなく、現実のバブルは好況期に発生しやすい。だからこそ、バブルと、バブルではない真の好景気との識別が難しい。 欠陥を抱える「新世代のバブル理論」 こうした景気循環とバブル