昨夏のことですが、NHK BSプレミアムの番組の予告字幕に目が吸い寄せられました。「京都人の密かな愉しみ Blue 修業中 祗園(ぎおん)さんの来はる夏」。この「祗園」の字は間違っているのでは? 断っておくと、「しめすへん」をどうこういっているわけではありません。左側が「示」と「ネ」で形が違っていようと、実質的に同じ字です。どちらで表記しても間違いとはいえません。問題なのは「へん」ではなく「つくり」。予告の字では「祗」、つくりの「氏」の下に「一」が見えます。 「祇園」は「祗園」としばしば誤記されます。「祇園」とはもともと「祇樹給孤独園(ぎじゅぎっこどくおん)」の略称です。祇はここではインドの祇陀(ぎだ)太子のこと。これに対して1画多い祗は、祗候(しこう)(貴人に仕えること)などの熟語を作ります。両者は似て非なる字なのです。 この記事は有料記事です。 残り805文字(全文1171文字)