Ⅰ 序説 1 主権免除とは 主権免除とは、主権国家は他国の裁判権に従うことを免除されるという慣習国際法上の規則である。かつては主権平等の原則から導かれる絶対的な規則であるとされたが(絶対免除主義)、国家による商業行為の発展にともない、現在では主権行為には主権免除が適用されるが業務管理行為には適用されないと理解されている(制限免除主義、大法院1998.12.17判決、最高裁2006.7.12判決)。 主権免除の範囲を定める条約として、1972年の欧州国家免除条約、2004年の国連国家免除条約があるが、前者は加盟国が8ケ国に過ぎず、後者は未発効である(2。また、日本を含む10ケ国に主権免除の範囲を定める国内法がある。このような国内法がない場合(後述の韓国を含む)には、主権免除を認めるか否かは慣習国際法に基づいて決定されることになる。 2 主権免除と戦後補償裁判 しかし、戦争行為は典型的な主権行