私はこれまで、30年近くにわたって元日本海軍を中心に、戦争体験者や遺族へのインタビューを重ね、一次資料を蒐集し、あるいは目を通して、何冊かの本を上梓してきた。このことが縁となって、テレビ番組や映画の考証、監修を依頼されることが時々ある。そこで得た知見は次の書籍にフィードバックすることもあるし、『マネー現代』に寄稿する記事にもそんな要素を散りばめているけれど、このへんで「考証的な豆知識」をシリーズで紹介してみたいと思う。 第2回の今回は、制作のとき、必ず問題になる「敬礼」と「服装」についてである。 陸軍と海軍の「敬礼」 軍人といえば「敬礼」の動作が必須だが、旧日本陸海軍の軍人を描いた映像作品、あるいは漫画でときどきおかしなことになるのが敬礼である。敬礼と言っても、たとえば海軍だけでも「各個の敬礼(室内、室外)」と「艦船の敬礼(軍艦、短艇)」「軍隊の敬礼」「衛兵及び番兵の敬礼」があり、さらに儀