昔の上司が絶賛していたので早速購入したのが、『赤めだか』。立川談志の弟子、談春が前座、二ツ目、真打と昇進していく修業時代をネタにした自伝エッセイだ。落語界の師弟関係を赤裸々に描く。師匠とのちょっとした行き違い、弟弟子への嫉妬、談志とその因縁の師匠小さんがそれぞれを思う気持ち…。抱腹絶倒させるかと思ったら、その次には思わずせつない話で泣かせる。落語のことはよく知らないし、ましてや立川談春の落語も聞いたこともないのだが、この人はきっとことばの天才だ。 印象に残った立川談志のことばをいくつか引用しておく: 「あのな坊や。おまえは狸を演じようとして芝居をしている。それは間違っていない。正しい考え方なんだ。だが君はメロディで語ることができていない、不完全なんだ。それで動き、仕草で演じようとすると、わかりやすく云えば芝居をしようとすると、俺が見ると、見るに堪えないものができあがってしまう。型ができてな