「精神分析が用いる諸概念は、哲学とは無縁な研究を通じて、解釈上の仮説として作り上げられたものである。」 F.アルキエ著『感情的意識』( 注1) 自閉症の神話について語りたい。まず、「自閉症の神話」という言葉で、筆者が何を言おうとしているかを、明らかにしておく必要があるだろう。この神話は、例えば、「ただ、こちらをちらりと見たその目に何億分の一かの怯えのようなものがからみついていると感じた。ドアの真ん中の小さい覗き穴から外へ目を凝らしている自閉症の少女・・・そんなけはいもあったが」( 注2)、という村松友視の文章の中の「自閉症の少女」という言葉の使い方の内に現れているものを指す。 この文章では、自閉症という言葉は、内気な人間が、怯えや不安などのために、人との接触を避け、「自己の内部に閉じこもろうとする傾向」といった意味で使われている。そして「少女」という言葉で示されているように、単に子どもの