エレブ大陸の東側にあるエトルリアと大陸を二分する大国――ベルン王国。 その中にある、とある大貴族の邸宅で、後継者となる赤子が誕生した。 永らく子宝に恵まれていなかった一族にとって、その子は希望であった。国王デズモンドも大貴族の血が途絶えずに済んだことを喜んだのか、祝いの品はかつてないほど豪華なもので、大貴族の当主は返礼の品をどう工面するか頭を悩まされたのだそうだ。 その大貴族の嫡子に、とある大学生が憑依する。 ドカーンとトラックに轢かれて死亡し、神様だか天使様だかよくわからない存在に蘇えらされ、目が覚めたら別人になっていました、「なんだってぇぇぇぇぇええ!」という経緯を辿ったようだが、説明が面倒なので全部省略する。説明したら中二病乙と言われるに決まっている。わざわざ自分の恥ずかしい思い出を語ろうとする者はいないだろう。 ともかく、ある日突然、彼は大貴族の嫡子となった。 その名を、ナーシェン