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ブックマーク / tomio.hatenablog.com (6)

  • 万城目学氏、直木賞を受賞する - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ

    昨年、十二月二十一日のことである。 森見登美彦氏は、万城目学氏と、ヨーロッパ企画の上田誠氏との忘年会に参加した。年末の京都に清らかなおっさんたちが集う忘年会も、すでに六回目を数える。 「六回目といえば」 ということで、万城目氏が新作『八月の御所グラウンド』で六回目の直木賞候補になっているという話になった。 しかし万城目氏の顔つきは暗かった。 「どうせあかんねん」 「待ち会はしないんですか?」 「そんなもんせえへんわ。いつもどおりにしてる」 それはいかん、と登美彦氏は思った。度重なる落選にウンザリする気持ちはよく分かるが、直木賞はようするに「お祭り」なのであって、盛りあがらなければ損である。「待ち会」は落ちてからが番なのだ。落選したってええじゃないか! 「何をいじけてるんです。待ち会やりましょう!」 「なんでやねん!」 「やるなら東京まで行きますって」 「あ、それなら僕も行きます」と上田氏

    万城目学氏、直木賞を受賞する - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ
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    pub99 2024/01/20
  •  登美彦氏、鉄道で旅をする - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ

    森見登美彦氏は、どっこい生きている。 登美彦氏はつい先日まで、ふいに息が苦しくなることがあった。 心臓がへんな動きをすることもあった。 登美彦氏の身体に問題はないようである。 しかしそう言われても、怖いものは怖い。 怖い怖いと思いながら我慢しているうちに、 息が苦しくなったり、心臓が止まりそうになったりすることは減ってきた。 しんどくて目が覚めることもなくなってきた。 けれども、まだ頭がぐらぐらしたり、身体が痛かったりする。 それらを登美彦氏はお薬と運動でごまかしている。 登美彦氏は毎日が日曜日である。 なぜ毎日が日曜日であるかというと、小説の書き方が分からなくなったからである。 もともと大して分かっていたわけではないが、いよいよ格的に分からなくなった。 「うーむ」 登美彦氏は机の前で腕組みをする。 ちょこちょこと書いてみるが、すぐ投げ出してしまう。 まるで「小説」を書いてるような気がす

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  • 『ペンギン・ハイウェイ』日本SF大賞をいただく - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ

    森見登美彦氏の第十子『ペンギン・ハイウェイ』が日SF大賞をもらうことになった。 この栄誉はあくまで我が子のものであって、登美彦氏などはほんのオマケに過ぎない。だからあまり親がしゃしゃり出て、自慢げにしてはいけないのである。 他の作品とちがって腐れ大学生でもなく京都が舞台でもなく、なんとなく仲間はずれで淋しそうにぷるぷるしていた我が子が、今ここに大きな賞で認められて、少し落ち着いてシャンとしてきた。 登美彦氏はただそのことを喜んでいる。 なお『ペンギン・ハイウェイ』は、スタニスワフ・レムの『ソラリス』を読んだ感動から生まれ落ちた作品であって、『ソラリス』がなければ『ペンギン・ハイウェイ』はなかった。 スタニスワフ・レムという雲の上の大作家から見れば「トミヒコ氏?ダレそれ?」となるに決まっているし、また『ペンギン・ハイウェイ』は登美彦氏が書いたものなのだから『ソラリス』とぜんぜん違うものであ

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    pub99 2010/12/08
  •  『ペンギン・ハイウェイ』が助けられた本たち - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ

    森見登美彦氏の書いた『夜は短し歩けよ乙女』という小説の中に、「古市の神様」らしい少年が登場する。彼は「すべてのはつながっている」と述べる。 登美彦氏の書いたで、世界のどのにもつながっていないというものは存在しない。 『ペンギン・ハイウェイ』というも、いろいろなにつながっている。 このが生まれるのを助けてくれたたちの一部を、以下に紹介する。 これらのを「参考資料」と呼ぶと何かが違う。登美彦氏はあまりそういう書き方をしないのである。ではどういう助けになったのかというと、それを説明するのは難しい。わかりやすくつながっている場合もあれば、ささやかなつながりである場合もある。 ただ、これらのは『ペンギン・ハイウェイ』が書かれている間、登美彦氏の机のまわりに置かれていた。そういうことである。 登美彦氏はこれらのに感謝しなくてはいけない。 (※新たに3冊を追加した6/20) [r

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    pub99 2010/06/25
  •  『新釈走れメロス他四篇』(祥伝社) - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ

    ※発売予定日10月15日(木) 芽野史郎は激怒した。必ずかの邪知暴虐の長官を凹ませねばならぬと決意した。 芽野はいわゆる阿呆学生である。汚い下宿で惰眠をむさぼり、落第を重ねて暮らしてきた。しかし厄介なことに、邪悪に対しては人一倍敏感であった。 森見登美彦氏が朝日締切次郎と格闘したり、その合間を縫うようにしてStoryboxに載せる「夜行」を書いたり、その合間にリンパ腺を腫らして寝込んだり、「ペンギン・ハイウェイ」の原稿を前にして髪の毛をかきむしったりしている間に、ちゃくちゃくとこのシブい息子が小型化を遂げていたのであった。 単行の装幀をそのままに小さく、さらに可愛く、懐にもやさしくなっていたのである。 なんということか。 小型化にあたって、このシブい息子はいくつものおまけを導入した。 ・芽野史郎はいかにして京都の街を逃げたか―彼の華麗な逃避行が一目で分かる地図。 ・文庫用のあとがき。

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    pub99 2009/10/10
  • 登美彦氏、かぐや姫を迎える。 - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ

    竹林はざわざわと揺れ続けている。 締切次郎は、登美彦氏のズボンの裾を引っ張っている。 「お願いします!『太郎』は、マジでやばい」 「ええい、かまわぬ。知ったことか!」 「太郎が来たら、それこそ何もかも、容赦なく締め切られてしまうのですよ。僕なんざあ、かなわねえ」 「じょうとうだ。太郎を呼び出して、おまえを蹴散らしてやる」 「分かんない人ですね!」 竹を切る腕におぼえあり。 登美彦氏はギコギコやりだした。 竹から発する橙色の光の中で、細かい切り屑がふわふわと舞った。 半ばまで切ったところで、どこからか「人生の柱時計」が時を告げる音が聞こえた。 ぼーんぼーんぼーんぼーん… えんえんと響いて鳴りやまず、ついに三十回を数えた。 「おや!」 登美彦氏は手を止めた。 「どうやら俺は三十路に入ったらしいぞ」 「これであなたも青春を失った」 「なんのこれしき、まだまだ!」 登美彦氏はさらにノコギリを動かす

    登美彦氏、かぐや姫を迎える。 - この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ
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    pub99 2009/01/13
    おめでとうございます
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