●久々に『マルメロの陽光』(ビクトル・エリセ)をDVDで観て、(画家としての)自分がこの映画から受けた影響の大きさをあらためて思う。この映画に出ている画家、アントニオ・ロペス=ガルシアのことはまったく知らないし(荒川修作、横尾忠則と同じ年に生まれた人らしいが)、一点も作品を観たことがないので、あくまで、「この映画」からの影響なのだが。とはいえ、この画家は、植物をまず色彩で描き、ついで線によって描こうとするのだから、まるで自分のようだと思わざるを得ない。というか、自分の今の制作は、この映画を観たことよって前もって決定されてしまっていたのではないか、と。 この映画は、画家の制作のプロセスを記録しようというものではなく、絵画が描かれ、生まれる時間を捉えようとしたものだと思う。ラジオから、東ドイツの消滅や湾岸戦争による原油の高騰のニュースが流れるなか、画家は毎日、自宅の庭にある小さなマルメロの樹の