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アリュージョニストの検索結果1 - 40 件 / 69件

  • 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム

    私が「小説家になろう」に投稿を始めたきっかけが、このカルト的人気を誇る作品でした。 当時の衝撃を今でも覚えています。 とあるまとめサイトに紹介されていた本作品を読んだとき、私は「こんなに自由に書いていいんだ!」と思いました。 サイバーパンク的なSF用語とハイファンタジーが高度なレベルで融合しており、それでいて物語がドラマチックで面白い。 物語の風呂敷がもう笑っちゃうほどクソデカに広がっていて、作者の好きなもの(?)がこれでもかと思うぐらいぎっしりと詰まっています。 そして、こんな書き方をしてもいいんだ、こんな書き方してみたい、と目からウロコが落ちました。 私の中で、小説の書き方の『幅』…続きを読む

      幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム
    • 出ますよ、アリュージョニスト作者の新作が - 魔王14歳の幸福な電波

      出ますよ。 祈る神の名を知らず、願う心の形も見えず、それでも月は夜空に昇る。 (MF文庫J) 作者:品森 晶KADOKAWAAmazon 作者の最近さんは『幻想再帰のアリュージョニスト』のWeb連載を7年にわたって続けていますが、商業小説の出版は2015年の『アリス・イン・カレイドスピア』以来。今回はペンネームを新たに「品森晶」*1とたうえ、MF文庫Jからの完全新作となります。あらすじを一見すると昨今の定番トレンドを意識した内容に思えますが、端々に出てくる情報やスピンオフ作品の内容を踏まえるとどう考えても一筋縄でいくはずのない雰囲気が漂っています。発売日は明日。電子版は日替わり後すぐ読めるみたいですし、冒頭試し読みも可能。よい時代ですね。 あと本作の発売にあわせて、スピンオフ集中連載として書き下ろされた『ハニーウィッチ・ユーフォリア』が無料公開されています。 ハニーウィッチ・ユーフォリア

        出ますよ、アリュージョニスト作者の新作が - 魔王14歳の幸福な電波
      • もしサイバーパンク世界の住人がオカルトパンク世界に転生したら~創世のアリュージョニスト~

        2-1.夢と呪いのファンタジー 2020/04/01 02:49(改) 2-2.ゼノグラシア/未知なることば 2020/04/02 23:49(改) 2-3.煉獄篇第一歌/秩序の守護者、あるいは混沌の殺戮者(前編) 2020/04/03 23:42(改) 2-4.煉獄篇第二歌/秩序の守護者、あるいは混沌の殺戮者(後編) 2020/04/05 23:34(改) 2-5.煉獄篇第三歌/形なき森 2020/04/07 23:45(改) 2-6.煉獄篇第四歌/異獣 2020/04/09 23:56(改) 2-7.煉獄篇第五歌/幻掌 2020/04/10 19:00(改) 2-8.煉獄篇第六歌/浄炎の向こう側へ 2020/05/01 23:53(改) 2-9.強くて頼りがいがあってダンディでセクシーな彼氏 2020/05/06 08:00(改) 2-10.一方通行の妄想彼氏 2020/06/04 2

          もしサイバーパンク世界の住人がオカルトパンク世界に転生したら~創世のアリュージョニスト~
        • 美少女JCお嬢様だけど幻想再帰のアリュージョニストを勧めないでほしいですわ

          グロが苦手なオタクもこの世の中にはいるんですわ 1話?を読んで怖くて泣いてしまいましたわ 『祈る神の名を知らず、願う心の形も見えず、それでも月は夜空に昇る。』も美麗イラストが素敵ですけれど噂によるとグロがありそうで手が出ませんわ

            美少女JCお嬢様だけど幻想再帰のアリュージョニストを勧めないでほしいですわ
          • 『幻想再帰のアリュージョニスト』の品森晶が贈る新作ハイ・ファンタジーが登場!

            大人気Web小説『幻想再帰のアリュージョニスト』の著者が、MF文庫Jで待望の新作を発表します。 【亜人】を【貴族】が従属させる確固たる身分制度が敷かれた時代……。千年の時代を経て復活した英雄が、全ての叡智が眠るという【学院】に通うことに! 美しく微笑む少年の正体は、勇者様? それとも神様!? あらすじ:失われた英雄の呼び名を、この世界はまだ知らない。 世界を滅ぼす邪神の眷属への対抗手段である“遺物”。 それを扱う才能を持たぬ【亜人】を純血人類たる【貴族】が従属させ、確固たる身分制度が敷かれた時代。 そんな千年後の世界に蘇った英雄・セロトは、人類の衰退ぶりに愕然としつつも、とある問題の解決のため、貴族の身分を得て、全ての叡智が眠るという【学院】に通い始める。 しかし、入学時の検査で遺物適正が最低ランクと判明。 劣等貴族と侮られることになるが、実技で実力の片鱗を見せていき……? これは悪夢のよ

              『幻想再帰のアリュージョニスト』の品森晶が贈る新作ハイ・ファンタジーが登場!
            • 幻想再帰のアリュージョニスト - 5-24 舞台裏の死角②

              大人になったら立派な顕花族になるのが少年の夢だった。 生粋の隠花族、どこからどう見てもキノコ人(マイコニド)である彼のそんな夢想を友人たちは無謀だと諫めた。幼馴染の少女は『あちしらには立派な傘頭巾があるだろバカ』と言って彼を叱りつけた。それでも彼は母の『お前の父は偉い顕花様なんだよ』という遺言を頑なに信じた。果たして少年は愚かだったのだろうか? 少なくとも哀れではあった。常識的に考えて、隠花族が顕花族と結ばれることなどまずありえない。彼はそういった不都合な事実を直視しない才能に恵まれていた。それは優れた邪視者の証明である。 友人たちは隠花族の権利のために戦って死に、少年は生き残ってとある顕花族の従僕になる機会を得た。顕花に憧れを抱く純朴さと邪視の力を評価されたのだ。 「あなたは賢明な子ね、『掃除屋』。その目で私たちには見えないものを見つけてきてくれたら、きっとスーリウム様にあなたのお願いを

                幻想再帰のアリュージョニスト - 5-24 舞台裏の死角②
              • 幻想再帰のアリュージョニスト - 5-46 レジェンド対モーレツターボババア①

                空が加熱していく。 選手たちを阻むのは青空を遮る雲の迷路。 挑む者たちを惑わせる壁となるのは乱気流と浮遊する岩塊。有形無形の障害を搔い潜る技術力と、その上で速度を維持する勝負強さが試される序盤の難所だった。 白熱する試合展開を盛り上げようと、実況のトリシューラが声を張り上げる。 「さあっ、波乱に満ちた第五階層での混戦を潜り抜け、やってきたのは最初の隣接異界、蒼空岩石群だ! 待ち受ける困難を選手たちはどうやって潜り抜けるのか!」 ここはいにしえの『散らばった大地の時代』の残滓とされている。 第五階層中央区では邪神の走狗と化したジュティア&ミナの探索者コンビによる反則行為と、それを鮮やかに制したリーナが展開の中心となっていたが、そこから状況は目まぐるしく移り変わる。レース展開は荒れていた。 「大変な展開になってきましたー! 蒼空岩石群コースに突入して早々に順位が激変! これまで先頭をキープして

                  幻想再帰のアリュージョニスト - 5-46 レジェンド対モーレツターボババア①
                • もしサイバーパンク世界の住人がオカルトパンク世界に転生したら~創世のアリュージョニスト~ - 2-20.冬を好きになれる日が来たら6/正しさからの疎外

                  種を植える運動には単純な環境美化以上の効果があった。 森に囲まれた第五階層に根付くという意思表示。そして槍神教に弾圧されているティリビナ人たちに対する味方であるというアピールだ。 この運動はSNSを通じて拡散され、動画投稿サイトなどを中心に広まっていった。 一般人からセレブ、運動選手や芸能人に至るまでがチャリティーという形でリレーを繋いでいく一大ムーブメント。『世界中で盛り上がっている』と教えてくれたのが竜神信教側の人間であったことを差し引いても、端末から覗いたネットの世界はその『祭り』を楽しんでいるようだった。 ところがそこに冷や水を浴びせたのが槍神教である。 第五階層で人道支援を行っている医療修道会の公式アカウントが、竜神信教が行っている『種まき運動』を『虚栄心を満たすための美徳の誇示』と批判したのだ。その直後に『堅実で意味のある善行』として『医療物資の分配』『予防接種の実施』といった

                    もしサイバーパンク世界の住人がオカルトパンク世界に転生したら~創世のアリュージョニスト~ - 2-20.冬を好きになれる日が来たら6/正しさからの疎外
                  • 幻想再帰のアリュージョニスト - 5-23 舞台裏の死角①

                    第五階層の夜が穏やかに更けていく。 祝祭の初日は表向き平和に締めくくられようとしていた。 沢山のドローンに小さな機械女王のテクスチャを張り付けた運営シューラたちは諸々の騒動の事後処理に追われていたが、人々は英雄ロードデンドロンの華々しい活躍に夢中だ。二日目から始まるレース、その主役はもしかすると彼になるのではないか。新たな天主の誕生、その瞬間を目撃することができるのではないか、と。 パレードは眠らぬ都市の中央を通過し、夜闇でこそ強く輝く奈落の舞台で踊り続けた。 人々は新たな冥府という名の歓楽街で歌い、踊り、美酒と果実を存分に楽しむ。 『冥府の住人』となる条件、戻らずの果実を口にしたことで『創造権』を獲得した観光客たちは、思い思いに第五階層ならではの幻想遊びに精を出し、滞在時間に関係なく『ガロアンディアン人』としての立場を手に入れていく。 言葉遊びと神話になぞらえた人口の水増し、即席の国力倍

                      幻想再帰のアリュージョニスト - 5-23 舞台裏の死角①
                    • 幻想再帰のアリュージョニスト - 5-44 ユディーア対チリアット③

                      『理想の共生国家ガロアンディアン』とか『徳深き賢君アルト』とかいう言葉は頻繁に参照されるがゆえに人々はその響きを聞き飽きており、端的に表現すれば陳腐化した常套句《クリシェ》と化していた。 多民族国家の元首は自国をガロアンディアンに喩えがちだし、外国人の助っ人を擁するラフディーボールチームの監督から主張の強い食材を前にした料理人まで、『理想的調和』の言い換えとして最もありふれた参照先といえばひとつの古代国家と相場が決まっている。 だから第五階層の新興勢力がガロアンディアンを名乗り始めたのはさほど不思議なことではない。歴史的にはよくあることで、陳腐であるがゆえに誰にでも通じる。 いままでのユディーアは機械女王がガロアンディアンという名を参照したのは『通りがいい』というわかりやすさゆえだと考えていた。六王の力と権威を借りるにしても形式だけで、本質的には杖の座としての呪力を軸にした全く別の王国を立

                        幻想再帰のアリュージョニスト - 5-44 ユディーア対チリアット③
                      • 幻想再帰のアリュージョニスト - 5-51 新時代の風

                        「これ友達が知り合いの記者から聞いたらしいんだけど」 「マジ? 大神院やばいじゃん」 「ソースはエーラマーン速報、解散」 風聞。伝え聞いた風のたより。世間で取りざたされる噂。 人から人へ、空間から空間へと流れていく情報は時に風に喩えられる。 風は噂で、噂は風。 アナロジーが作用する限り、それらは限りなく近しい呪文となる。 中世から近世にかけて発達したラジオ放送や心話共感網はもちろん、特権的な言語支配者たちが占有していたアストラルネットが近代に入って解放された事件は極めて重大な契機ではあるが、それでも情報の中心は慣習と権威に縛られている。 古典的なマスメディアとは何か。新聞、出版、水晶テレビ。連綿と続く巨大な報道機関の根幹にあるのは実のところ『神官の託宣』であった。 神々の代弁者。天に耳を傾ける祭司。 その中で最も古く、最も巨大で、最も広く世に浸透した血族がいる。 呪文を、ことばを、風を、大

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                        • もしサイバーパンク世界の住人がオカルトパンク世界に転生したら~創世のアリュージョニスト~ - 2-4.煉獄篇第二歌/秩序の守護者、あるいは混沌の殺戮者(後編)

                          その日の来客たちは、それまでのならず者とは様子が違っていた。 シンプルな立て襟の祭服姿で、大量の物資を抱えている。 ティリビナ人たちの居留地に近い場所にキャンプ用の資材やコンテナを持ち込み、中からは食料や衣服を取りだして渡そうとしていた。 なにやら慈善団体めいた雰囲気が出てきたが、もちろんそれだけでは終わらない。 「天地を貫く偉大なる我らが父よ、何よりも鋭きその穂先より血を払うがごとく、無知なる者たちの罪を赦したまえ。異端なる心を悪より救いたまえ」 男たちは分厚い本を取り出し、よく響く声で開いた項の一節を語り出した。 背後の集団が瞑目して祈るような仕草をしている。 つまりあの本は聖典で、これは祈祷なのだろう。 集団は小さな槍型の祈祷具を手に持ち、設置した台に松明を近付けて篝火にしていた。 ティリビナ人たちは物乞いの集団でもある。 こういう施しは助かることだろうなどと思っていた俺は意表を突か

                            もしサイバーパンク世界の住人がオカルトパンク世界に転生したら~創世のアリュージョニスト~ - 2-4.煉獄篇第二歌/秩序の守護者、あるいは混沌の殺戮者(後編)
                          • 幻想再帰のアリュージョニスト - 5-50 空に架かる虹

                            中継整備所《ピット》は騒然としていた。 ミルーニャの話では、虫王の庭に設営された選定レース用の基地には、祝祭を妨げるような不測の事態に対応するための備えが幾つもあるということだった。緊急時に用いられるはずの大型輸送箒や戦闘用ドローンなどが一斉に稼働を開始したことから、異常事態が起きていることに疑いの余地はない。 部外者である私たちチョコレートリリーが焦げ臭い闘争の気配に気付くほどだ。 運営サイドの緊張感は相当なものに違いない。 だが施設職員たちに対して下った指示は『予定通り選手たちを万全な態勢で受け入れてね!』という普段通りのものだけ。 取り繕うような説明も白々しいカバーストーリーも用意されていない。 その事実から推測可能な裏側は、逆に職員たちの危機感を煽ったようだ。 機械女王が油断ならない相手だという負の信用があるため、『今の機械女王には市民をコントロールする余裕がない』という不安が生ま

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                            • 4-211 終節:刃『Oedipus/Simplex』② - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム

                              ばちんと音がして、スポットライトの下に現れる騎士とまじない使いの丸っこい人形。紅紫の少女人形トウコが声色を使って二役を演じていく。 「ベルグくんと!」「ガルラくんの!」「悪いがこの空間を遣わせて貰うぞ、そらどけ発勁用意だ死ね人形使い」 突如として乱入した俺に蹴り飛ばされたトウコが人形たち共々舞台袖に転がっていく。「うわーん」という泣き声を無視して、ぞろぞろとやってくる俺ことシナモリアキラの団体。『マレブランケ』のメンバーを中心とした、多彩な顔ぶれが一堂に会していた。 「これより、シナモリアキラ脳内会議を始める」 正式な劇中ではなく、幕間劇という舞台外の舞台だからこそ可能になった空間の乗っ取り。即席の会議室で、俺たちは情報交換を始めた。 「理解不能ですよもう。吸血鬼にボコられた俺の身体は? ていうか現実って何みたいな。劇とか舞台とかここ最近は足場ぐらぐらで目が回りっぱなしで」 真っ先に銃士(

                                4-211 終節:刃『Oedipus/Simplex』② - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム
                              • 4-216 終節:除『Under The Law』② - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム

                                説明が必要だろう。時間は少し遡る。 三度目にして最後となる再演劇の舞台で、はじめ私は意識を喪失していた。 それは私だけではない、多くの人形たちがそうだった。 知っての通り、世界は既に枯れている。 天を仰げば誰にとってもそれは自明だった。どこまでも続くかと思われた蒼穹がぶつりと途切れ、灰色の檻となって可能性の限界を示している。 空を悠々と泳ぎながら腐臭を撒き散らす『死海の大魚』はかつてマツヤと呼ばれていた大型艦の成れの果てだ。死せる女神の権能によって腐った巨大魚となった怪物は、今は第五階層の空を回遊しては新しい命を摘み取ろうとする悪意の化身に成り果てている。これほど終末の風景らしい荒廃ぶりもそう無いだろう。 この世界の中心に聳え立ち、全ての命を支えていた世界樹はずっと昔に盛りを過ぎて、朽ちて倒れた幹は枯葉の絨毯の上でゆっくりと腐っていくのを待つばかり。横倒しの塔に取り残された人々は目減りして

                                  4-216 終節:除『Under The Law』② - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム
                                • 幻想再帰のアリュージョニスト - 5-53 同病相憎む

                                  普段の第六階層はおおよそ広大な地底空洞の姿をしている。 掌握者アルト・イヴニルがラフディの地底都市をイメージしたため、周囲を照らすものは発光する呪石や岩壁にへばりつく光苔といった仄かな自然光のみだ。 だが少なくとも今はそれだけではない。階層の外周境界壁付近に転移してきたユディーアたちを照らすのは眩い文明の灯火だった。 それらは巧みに人の心に付け入り、惑わし、呪縛する浄界の輝き。 湯気に覆われた温泉、風船舞う遊園地、欲望渦巻く繁華街。 三つの景色が交差する一点を、稲妻のように死の幻視が穿つ。 気が付けばユディーアは巨躯の猪人《ブルータ》に片腕で担がれていた。加速状態で疾駆したチリアット=アテンプレクが魅了浄界から彼女を救出したのだ。 「アテン、チリアット先生?! 怪我っ!」 「にあ~」 鮮やかな救出劇の直後、チリアットが低く呻いて片膝を突く。 同じく救出されていた小さなセリアック=ニアが猪人

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                                  • 幻想再帰のアリュージョニスト - 5-27 舞台裏の死角⑤

                                    憎悪には慣れている。軽蔑にも、隔意にも、差別にも。 いっこうに慣れないのは、己の内側で燃え盛る灼熱だけ。 「『葬儀屋』の妹」「あの活動家のせいで何人が死んだと思っている」「なにが活動家だ。家畜に入れ込んで同胞を裏切った屑ではないか」「格式ある葬礼祭司の家などと持て囃されて勘違いしたのだろう。身の程を知れというのだ、忌み仕事しか能の無い隠花もどきが」 隠花を庇い、キノコ人たちの解放を掲げて反抗勢力に組した顕花族。 それがエリカ・モノトロープの兄だった。 優しく、聡明で、誇り高く、虐げられる従僕たちの扱いに疑問を覚え、旧態依然としたティリビナ人の在り方を変えようとした理想主義者。 ある時からエリカの兄は顕花族としての名を捨て、キノコ人のように『葬儀屋』などと名乗るようになった。その『活動』は次第に過激さを増していき、周囲の不理解と反発に疲れ始めた彼が短絡的な暴挙に辿り着くまでにそう時間はかから

                                      幻想再帰のアリュージョニスト - 5-27 舞台裏の死角⑤
                                    • 幻想再帰のアリュージョニスト - 5-36 名無しの王争奪戦①

                                      巨大昆虫が空を飛び交う第五階層の隣接異界・虫王の庭。 どこまでも広がる山野と、緑を裂く枝のような河川。その中にひっそりと隠れていた機械女王の拠点は、いまやその所在を暴かれ、悪意に晒されていた。襲撃者たちは遠目にも明らかな樹皮肌で、ティリビナ人の過激派勢力であることを隠そうともしていない。 「『クイーンサイド』の連中が動いたぞ」 そんな戦闘の光景を監視水晶で覗き見る集団がいた。 襲撃地点からやや離れた木立に身を潜めるのは、『ハルムシオンの風』と呼ばれる亜大陸出身の黒檀の民である。 中心にいるのは一組の男女。頭目のアサブと、その情婦アキレギアだ。 「お手並み拝見ってとこか。せいぜい暴れてくれよ? あんまショボいと『正義の味方』がやりづれえからよ」 「あくまでも失敗時の修正シナリオだろ? 流れ次第じゃ何もせず撤退ってこともある。あんまはしゃぐなよ、アキレギア」 露骨な好戦性を見せる女に対して、男

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                                      • 3-99 澄明なる青空に② - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム

                                        私とリーナの戦いが決着した。 天地での戦いが終わり、リールエルバが世界の改変を食い止める。 その時だった。 別の場所で繰り広げられていた戦いの決着が、状況を更に変化させていく。 巨大な肉塊となった世界槍の頂点付近で、凄まじい呪力が放出された。 吹き飛ばされ、宙に放り出されていくのは、単身聖女暗殺に動いていたマリーだった。 十字に輝く瞳で敗者を見送るのは、守護の九槍第二位たる聖女クナータ・ノーグその人だった。 使い魔らしき紫槍歯虎がマリーの武器である槌と鑿を噛み砕いている。 落下するマリーの額に古傷らしき貫通創が『思い出され』ていった。 見る間に傷口が広がると、過去に処置不能な致命傷を負っていた事になる。 その負傷が原因で、たった今、マリーは死亡してしまったのだ。 未来から過去方向へと突き進む致命の一撃。 聖女クナータの神働術を受けた者は、既に死んでいたことになってしまうのだ。 更に、そこに

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                                        • 幻想再帰のアリュージョニスト - 5-43 ユディーア対チリアット②

                                          最後に顔を見たのはセインディアの博物城で行われたとある展示でのことだ。 保全された血統作品の展示。それは祭礼に等しい。 『血』に意味と価値を与え、文脈の中に配置するまじない。 博物城を運営するキュレーターたちは独自の裁量権を持つ企画者であり、祭司でもある。 その日に行われた『ペラティア展』は大断絶によって失われた世界の記憶を呼び覚まそうとする文化的死霊術であり、槍神教と義国によって奪われた価値を取り戻さんとする呪詛でもあった。テーマは暗黙の怒り。朽ちた文化と欠けた美が立ち並び、再現しきれなかった遺物が打ち捨てられる廃墟の光景。取り繕うことさえできない絶対的な空虚が見すぼらしく並ぶさまは、無数の敗北を表現する。 滅びた都をモチーフにした展示は、『ユディーア』の浄界に等しい。 企画を立案したのは自らの娘を展示の目玉に据えたレストロオセ四十四士の後継者。 城主代行ティシリアの後押しもあり、成功は

                                            幻想再帰のアリュージョニスト - 5-43 ユディーア対チリアット②
                                          • 児童文学から森絵都、ゲームノベライズやラノベから桜場一樹が出てきたみたく今後、越境する可能性はあると思うがなあ。出るわけがないと決め付けてるなら、お好きにとしか。幻想再帰のアリュージョニストがオススメ - natu3kanのコメント / はてなブックマーク

                                            児童文学から森絵都、ゲームノベライズやラノベから桜場一樹が出てきたみたく今後、越境する可能性はあると思うがなあ。出るわけがないと決め付けてるなら、お好きにとしか。幻想再帰のアリュージョニストがオススメ thinking

                                              児童文学から森絵都、ゲームノベライズやラノベから桜場一樹が出てきたみたく今後、越境する可能性はあると思うがなあ。出るわけがないと決め付けてるなら、お好きにとしか。幻想再帰のアリュージョニストがオススメ - natu3kanのコメント / はてなブックマーク
                                            • 幻想再帰のアリュージョニスト - 5-52 ピットイン

                                              テキストベース・サーキットにおけるピットインとは何か。 普通の箒レースなら機体の整備、部品の交換、燃料の補充が行われる。 しかし、この場で最重要視されるのは『文脈の充填』である。 勝つ流れを生み出すため、選手たちはここで『自身の物語』を練り上げる。 個人としての勝利の布石。 自分こそが主人公であるという確信を現実に変えるための準備を行うのだ。 虫王の庭におけるレースはリーナ・ゾラ・クロウサーの優勢で終わった。 後続グループの追い上げは激しく、ビルメーヤとダウザールの競り合い、追い上げるパーンとファーガストの黒風争奪戦、不可解な大回りルートで再び最下位に転落したジーゼロなど幾つもの波乱がありつつもリーナの圧倒的な優位は揺るがないまま。 長丁場のレースによって祝祭二日目の午後は瞬く間に過ぎていく。 本来ならば選手たちはここで中継整備所に一時的に機体を預け、夜を徹して精神を苛め抜く過酷な夢界レー

                                                幻想再帰のアリュージョニスト - 5-52 ピットイン
                                              • 幻想再帰のアリュージョニスト - 終節:窮『Put My Finger Only On Your Cheek』

                                                夢の中、鋼の右腕が纏う血の色に、目を奪われた。 それがはじまり。微睡みと過去とが交わる、死と悦楽の散文詩。 浮上する泡に溶けて、消えていく寝物語の、最初の一文。 ――子守歌は血の味がしたはずだ。 言葉は嘘で、優しさは虚ろ。 それでも選べる愛はひとつきり、震える手で縋るしかない。 これが愛だと口に含んだ果肉の正体を、考えてしまったら全てが終わる。 最初から手遅れでも、気付くことを遅らせることならできるのだから。 私たちは、誰もがみな死の上に立っているということ。 私たちは、誰もがみな死の上に誰かを乗せていくということ。 沢山の命を抱きしめながら、感じていたのはそんな恐ろしさ。 彼が恐怖し、切り離した命の忌まわしさ。 そんなふうにして重く鈍い諦めを受け止めながら、私は胸の奥から止め処なく感動が湧き上がってくることに驚いていた。 口元に運び、牙を突き立て、顎を伝って溢れていく真っ赤な果汁。 なん

                                                  幻想再帰のアリュージョニスト - 終節:窮『Put My Finger Only On Your Cheek』
                                                • 幻想再帰のアリュージョニスト - 5-33 本選開幕④

                                                  第五階層の上空に、虚飾の風が吹く。 人々が見上げるテキストベース・サーキットよりも更なる高みに浮かぶ大小の飛行船。 祝祭を開催するため、というよりガロアンディアンという砂上の楼閣の維持に必要不可欠な『外部』の思惑を取り繕うための、利害関係に基づいた協調。 その象徴が幻像と呪文による広告でコーティングされた飛行船の群れだった。 その中には『稲穂と根菜と鎌』というシンボルを掲げた飛行船が混ざっている。 『ガリヨンテの鎌』という名で知られる、第八階層を中心に活動する武装商会の持ち物だった。飛行船の主はセロナ・ハーヴェスト。迷宮の遺品と盗品を漁って売りさばくならず者たちの長は、船内に設えられた応接室の中央で大きく息を吸った。 震えにも似た深呼吸。冷や汗が肌を伝う。 ゆったりとしたシルエットのクリーム色のストールの内側で、細いなで肩がひどく縮こまって見えた。この青年は機械女王が用意した『護衛《かんし

                                                    幻想再帰のアリュージョニスト - 5-33 本選開幕④
                                                  •   - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム

                                                    どこかのいつか。 暗く狭い鉄の檻、闇から闇へスクラップを運ぶベルトコンベアーがあった。 過去から運ばれてくる残骸の支流は収束し、流動する鋼鉄の大河となってその場所に辿り着く。 そこは価値の墓場だった。 打ち棄てられた『がらくた』の山。 死屍累々の人形たち。 笑う人形師。未来から現在を操作する遊戯盤の干渉者。 肩から垂れた髪の房は左右で違う赤と青。 指先から繋がった赤青混色の糸が盤面の上、和装の人形に絡みついている。 小さいながらも精巧に作られたその形は寸分違わずイツノと称される少女と同一であった。その出来映えの見事さといったら、イツノをモデルに作られた模型というよりも、この模型を元に作られたのがイツノではないかと思われるほど。 盤外には幾つもの人形――模型が並んでいる。 義手、装甲、重火器――メタリックな質感と油のにおいを迫真の模造で突きつける趣味の極致。縮小された現実は、価値の転倒によっ

                                                        - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム
                                                    • 3-101 『特権者の英雄症候群、さもなくば――』① - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム

                                                      「最初におかしいと思ったのは、殺害された人数」 ハルベルトは静かに呟いた。 左右非対称の耳は晒したまま。 今回の戦いで、その正体は万人が知るところとなってしまった。 けれど――過去の歌を響かせた今ならば、もうその耳を隠し続ける必要も無い。 困難は果てしなく、地上の秩序は未だ歪んだままだ。 槍神教を相手にした戦いは終わらない。 それでも、世界を変える下準備にはなったはずだった。 ハルベルトを、そしてアズーリアを世界に認めさせること。 それが最初の一歩だ。 「ガルズによる十三人の殺害――その最初の一人であった夜の民の群青司教は確かに食用奉仕種族を触手で黒衣の中に引き摺り込んでいた。そして、体内から溢れ出た骨の槍で分裂した三つの体を貫かれて死んだ」 そう。これは最初の一歩に過ぎない。 道のりはまだ長く、煉獄と地獄には過酷な戦いが待っているだろう。 同様に、この天獄でも。 「――リーナもメイファー

                                                        3-101 『特権者の英雄症候群、さもなくば――』① - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム
                                                      • 幻想再帰のアリュージョニスト - 『チョコレートリリーのスイーツ事件簿Season2 Case.14 アズチョコに挑め!』

                                                        「ハルベルト! 大変、アズーリアが大変なことに――!」 息せき切ってメイファーラがハルベルトの部屋に駆け込んできたのは、とある昼下がりのことだった。 その日、ハルベルトは優雅に深緑色のロクゼン茶を飲みつつ大きなリクライニングチェアに身を預け、頭の中で弟子のための指導プランを組み立てながら手元の端末で二月後に迫った言語魔術師試験の予想問題の作成を行っていた。終わったら第五階層でのライブに向けて少しずつ準備を進めていかなければならない。やることは山のようにある。けれどそれが仲間たちとの賑やかな道行きであるのなら、忙しさは充実に変わるだろう。 今はもう一人きりで駆け抜けてきた頃とは違う。 何より、いつも傍に手のかかる姉妹のような弟子がいてくれる。 そのことを思うとハルベルトの心はうきうきと弾んで、故郷の低重力区画で遊んでいた頃のように飛び跳ねたくなってしまうのだった。 そんな時、よりにもよって愛

                                                          幻想再帰のアリュージョニスト - 『チョコレートリリーのスイーツ事件簿Season2 Case.14 アズチョコに挑め!』
                                                        • 幻想再帰のアリュージョニスト - 5-19 踏み付けられた死

                                                          小気味良く打ち鳴らされる太鼓と、リズムにのって躍動する肉体。 エキゾチックな亜大陸の伝統音楽が流れる中、勢いよく手を叩いて踊る二つの種族。 いがみ合っていたはずのティリビナ人と黒檀の民が、深い断絶を乗り越えようとする祝祭の光景。活気に満ちた第五階層の主街区を天眼による俯瞰知覚で眺めながら、ユディーアはぼんやりとオープンテラスの席に座ってストローでジュースを啜っていた。強い酸味。舌を刺激する感覚で倦怠感を誤魔化す。 ロードデンドロンの取り成しでアサブは監視付きという条件で捕縛を解除された。 異例、特例、道理の通らない裁定。 法秩序よりも政治的判断を優先させた機械女王を合理的と見るべきか危ういと見るべきかはともかく、結果的に生まれた光景は確実に新しい流れを生み始めていた。 午後から予定されていたパレードに合流した二つの血族集団はまるでそれが当たり前の光景であるかのように祝祭を楽しんでいた。 否

                                                            幻想再帰のアリュージョニスト - 5-19 踏み付けられた死
                                                          • 4-222 終節:窮『Put My Finger Only On Your Cheek』② - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム

                                                            揺らぎの中にいる。 まずはじめに、その確信があった。 そこは誰かの意識の底。 闇に包まれた内面世界。 無限に広がる虚空のどこかから、ゆっくりと振動が近付いてくる。 懐かしさを伴った気配に引き摺られて、心地良い目覚めが身体を包む。 遠くから響いてくるのは叱りつけるような、それでいて激励するような声だ。 「いつまで寝ているのです、この軟弱者! それでも『黄金』位の高みに到達した舞い手ですか。しっかりなさい!」 世界の主は、呼び声に規定されるようにして空間に出現した。 気が付けば果ての無い闇の中、どうしてか目の前の人物だけがはっきりとした像を結んでいる。瞑目した少女は羊飼いの服装で、穏やかながらも苛烈な表情で叱咤を続けている。息を呑む。少しして、鮮烈な輝きと共にあったファウナの名を震える声で口にした。盲目の黄金アイドルは、眉を少しだけ下げて言った。 「ここでは師匠とお呼びなさい。私は黄金の継承と

                                                              4-222 終節:窮『Put My Finger Only On Your Cheek』② - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム
                                                            • 0-7 第九魔将 - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム

                                                              九十九戦して五十勝四十九敗。 百戦目はお預けのまま、別れの時がやってくる。 そこはジャッフハリムの東方に聳え立つ奉竜山。 外力無双で知られる西とは異なり、そこは内力を極めんとする武術家たちにとっての総本山であった。 内家拳の極致と称される青海の教えを受けんが為に、胸に大志を抱いた様々な者達が集う武術の聖地。 少女は地に伏した相手に手を差し伸べるが、無視されてしまう。 自力で立ち上がった少年は、強い視線を向けながら言った。 「勝ち逃げする気か」 「知らないよー」 少女は少年より、まだ少しだけ背が高い。 男の子の負けん気は嫌いじゃない。 とはいえ、やむを得ない事情というのはいつだってどこにだってあるもので。 「そっちだって立場は同じなんだから、わかるでしょ。四十四士の家に生まれたらさ、いつかはジャッフハリムに――レストロオセ様にお仕えしなきゃなんだし」 「貴様は天蓋の上に向かうらしいではないか

                                                                0-7 第九魔将 - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム
                                                              • 幻想再帰のアリュージョニスト - 5-25 舞台裏の死角③

                                                                シナモリアキラなら無料。 新時代の転生者となって、第五階層を駆け巡ろう! 空前絶後のラストマンスタンディング! 戦って戦って戦い抜いて、最後まで立っていた奴こそが真のシナモリアキラだ! キミもガロアンディアンにダイブして、レッツ転生! 無数の幻像広告が夜闇を斬り裂いて天を染め上げる。 涼やかな声が街を震わせると同時、都市の上空に巨大な飛行船が現れた。 最近になって外からやってきた者たちは耳を疑い、第五階層の住人はまた始まったと即座に受け入れるお決まりの流れ。 ガロアンディアン、本日の天気は晴れ。 ところによりシナモリアキラ。 上空の飛行船から一斉に飛び降りた無数の人影が雨あられと都市に降ってくる。 彼らはゲームプレイヤー。老若男女、多種多様な顔ぶれが集い、その力を競い合う。 きっかけはとあるゲーム好きな魔女の思いつきだった。 『祝祭期間中、バトルロイヤルゲームがやりたい』という要望を受けた

                                                                  幻想再帰のアリュージョニスト - 5-25 舞台裏の死角③
                                                                • 幻想再帰のアリュージョニスト - 3-0 どうして空は青いの?

                                                                  白い綿毛よりも大きくて、黄色い車輪をぐるぐる廻す、赤いカーテンが大嫌いな、真っ黒な天井を見たことがないもの、なーんだ? ――ヘレゼクシュに伝わる謎かけ 青。 抜けるように高い空が、頭上に広がっている。 綿毛のような雲、翼をはためかせて地上に影を落とす鳥。 浮遊する大地の欠片は遠い昔、散らばった大地の時代に大陸や浮島だったものの名残だ。 迷宮内では決して見ることの叶わない、地上固有の光景がそこにあった。 地上、迷宮、地獄。三通りの世界が平行して存在する中で、地上の最も優れた点は何かと問われれば、それはこの無限の蒼穹があることだと答えることができる。 美しいとかそういう価値基準を超えて、ただそこに広がっているあの綺麗な空が、私はたまらなく好きだ。 暗く淀んだ迷宮のことを思えば、この地上世界がどれだけ尊いのかが身にしみて実感できる。 ふと、他愛のない事を思い出す。 『色彩』を知ってからしばらくの

                                                                    幻想再帰のアリュージョニスト - 3-0 どうして空は青いの?
                                                                  • もしサイバーパンク世界の住人がオカルトパンク世界に転生したら~創世のアリュージョニスト~ - 2-21.冬を好きになれる日が来たら7/尊い犠牲、尊い愛

                                                                    ゾウのごとき巨体が軽々と宙を舞う。 呪動装甲と同調した幻掌に確かな手応え。ウデモドキが反動をしなやかに吸収する。断章のおかげで姿勢制御の誤差修正は完璧。遺跡の床面を鉤爪状の足ががっしりと掴み、踏み込みから生じた運動エネルギーを装甲内部でうねる生体部品が増幅していく。 仲間たちの支援を受けながら、俺は勇ましく敵に向かっていく。 遺跡深部に足を踏み入れた探索者たちへの洗礼。 それが灰色の肌にぎょろりとした単眼を持つ巨人たちの襲撃だった。 その日、ラズリ・ナアマリリス率いる竜神信教の一行が足を踏み入れたのは第五階層を取り囲む六大遺跡の中でも最大規模を誇る『竜の遺跡』だ。 石造りの通路は左右が狭く、必然的に縦列を作って進むことになる。隊列の並びは先頭が俺とジン、それに続いてラズリさんが集めてきた頼れる仲間たち、最後尾に竜導師たちという順番。薄暗い通路を俺が持つランタンが照らしていた。 いや、厳密に

                                                                      もしサイバーパンク世界の住人がオカルトパンク世界に転生したら~創世のアリュージョニスト~ - 2-21.冬を好きになれる日が来たら7/尊い犠牲、尊い愛
                                                                    • もしサイバーパンク世界の住人がオカルトパンク世界に転生したら~創世のアリュージョニスト~ - 2-18.冬を好きになれる日が来たら4/好きに縛られて

                                                                      逃げなければ。 こんなにも居心地の良い場所を捨ててどこへ? 手を振り解かなくては。 こんなにも素敵な人を拒絶する理由がどこに? ゴアゴア、ゴアゴア。 頭の中で小さな怪物の鳴き声が響く。 麻痺した心に短い牙を突き立てて、正気に戻れと必死に叫んでいる。 おかしいな。俺は正気だ。その証拠にラズリさんへの愛だけが思考の全てを占めている。 感情と意思はラズリさんと共に生きると決めている。 自らの存在、その意味も価値も彼女と出会うためだけのもの。 それこそが俺の運命。それこそが俺の本当の願い。 大いなる愛、尊い絆、自分を肯定してくれる優しさ。 『きっときみは、あの子の生まれかわりなんだね』 それは多分、人間にとってかけがえのないものだ。 ふと、白く染まった光景を思い浮かべる。 一面の銀世界。吐く息は白く、肌を包む大気は冷たい。 人は当たり前に愛されていい。恵まれていていい。そう思わなければ生きることさ

                                                                        もしサイバーパンク世界の住人がオカルトパンク世界に転生したら~創世のアリュージョニスト~ - 2-18.冬を好きになれる日が来たら4/好きに縛られて
                                                                      • 幻想再帰のアリュージョニスト - 5-17 ペラティアの末裔

                                                                        ノゴルオゴルオ・ディスケイムと威力竜の巫女マルガリータが手を結んでいた。 衝撃と言えば衝撃だが、よくよく考えてみればそう不思議なことではない。 ディスケイム家の影響力は『下』の全土に及ぶ。 そもそもユディーアが竜神信教の巫女であることがその証明だ。 生家であるセインディアの博物城と竜神信教の繋がりは深い。 城主である『金爪』のアゥルメイアからしてかつて第三位の巫女を務めていた古竜だ。 『エレクトラ(ユディーア)』に竜覚を叩き込んだ師。血統魔術師の祖。赤蜥蜴人たちを統べる竜血公。ディスケイム家の頂点に立つ長老たちのひとり。 ユディーアは師以外の長老たちと会ったことはないが、おそらくノゴルオゴルオもまたディスケイムの長老格だったのだろう。この程度の手回しは当然と言えた。 腰に手をあててこちらを見据えるマルガリータは驚くユディーアの表情が愉快だったのか、少し得意そうにこう続けた。 「私の箒、見た

                                                                          幻想再帰のアリュージョニスト - 5-17 ペラティアの末裔
                                                                        • 幻想再帰のアリュージョニスト - 5-54 虹弓のレメス

                                                                          湯気立ち上る温泉の風景が、より広大な海に呑み込まれて融け落ちる。 浄界の破綻。百目のクロウサー、イナータルゴによる調和さえ塗りつぶして、青い血が全てを呑み込んだ。 濁流の発生源はメートリアンの右目。 空っぽのトランクケースを前に、呆然とへたり込む白い少女のアストラル体に異変が起きていた。ユディーアのマテリアル体から一時的に幽体離脱していただけの不安定な存在だった彼女が、いまははっきりと自律した呪的生命に変化している。 死霊術士《ネクロマンサー》によって『死霊としての定義』が行われた結果のようにも見えるが、それにしては実在感が濃すぎる。純度の高い妖精《アールヴ》や夜の民、空の民のように、アストラル比率の高い生命体に近づいている可能性がある。 あるいは『そういう種族になった』と言い換えることもできるかもしれない。 「え、なんですかこれ、私の身体がある?」 困惑するメートリアンはぺたぺたと素手で

                                                                            幻想再帰のアリュージョニスト - 5-54 虹弓のレメス
                                                                          • 5-58 人形たちの飛躍、あるいは墜落 - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム

                                                                            動物たちが愛を歌い、世界は朱色の夢に沈みゆく。 熱情の色に染まった空を、幾つもの光が流れて落ちた。 それは原初的な生命の種。 空を走るのは、精子と化した機甲箒の一群だ。 異常極まりない光景。支離滅裂な夢でもまだこれより現実味があるだろう。 だが、変容した獣将国にも幾らか原型を留めている部分はあった。 選手たちが進むのは自然の暴威によって浸食された大渓谷のコースだ。 古代に存在していた巨大な呪力流は山を削り大地に無数の亀裂を生み出した。 今は消え去った豊かな呪力資源の痕跡。そんな豊穣の残滓に誘われてやってきたのは無数の生命だ。この『獣たちの王国』の様相は無秩序の極みにある。 巨大な翼で空を舞う黒犬がいる。大気を泳ぐ鳥魚がいる。見つめた虚空を固めて踏みしめる水牛がいる。蹄持つ馬族の背には翼があり、また別の馬の下肢には足ヒレがあり、それとはまた異なる個体の額には角があった。 人が創造し得るありと

                                                                              5-58 人形たちの飛躍、あるいは墜落 - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム
                                                                            • #幻想再帰のアリュージョニスト アリュージョニスト絵まとめ - 江ノ内愛のイラスト - pixiv

                                                                                #幻想再帰のアリュージョニスト アリュージョニスト絵まとめ - 江ノ内愛のイラスト - pixiv
                                                                              • 幻想再帰のアリュージョニスト - 5-42 ユディーア対チリアット①

                                                                                チリアットはマレブランケ構成員のひとりである。 トリシューラの配下としてはマラコーダやイツノに次ぐ古株で、己に向かって弧を描く独特の牙を持った牙猪《バビルサ》氏族の猪人《ブルータ》だ。 とある理由から魔将ダエモデクの軍勢から逃亡していた彼は、迷宮内部で逃げ隠れする日々を送っていた。そんな彼にトリシューラが手を差し伸べたことから、成り行きでガロアンディアン勢力に手を貸し続けることになった。全ては、彼が見捨てた黒き亜竜ダエモデクとガロアンディアンの因縁を知り、その未来に手を課すべきという使命感ゆえに。 そういうことになっている。 少なくとも、これまで彼について語られたストーリーをそのまま鵜呑みにするのであれば、チリアットという男は特に『白き亜竜の成れの果て』である名無しの王を守るための動機を強く持っていなくてはならないはずだ。 「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない」 自らの頭部へ

                                                                                  幻想再帰のアリュージョニスト - 5-42 ユディーア対チリアット①
                                                                                • 4-161 青嶺瑠璃 - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム

                                                                                  この世界は舞台のようなものだとオルヴァは思う。 十字の瞳が示す時空の全ては積み上げられた膨大な脚本で、誰も彼もが定められた流れに沿って演技を続けていく。 過去と未来とが交差する現在の一点で許されているのは即興と解釈で、演技を通して表現される役者の顔こそが個性を形作る。だから人生と言う名の演劇は全てが決まりきっているようで、意外と驚きに満ちている。 脚本と演出(かみがみ)に忠実な信仰者が祈るように台詞を歌い上げたかと思えば、型破りな解釈で己の世界を披露せんと個性豊かな役者が舞台狭しと駆け回る。愛すべき我らが女神は役者も演出家もこなしてのけるし、パーンなどは積極的に客席に飛び出して劇をめちゃくちゃにしてしまう。決まりきった人生には決まりきっているが故の楽しみ方があった。あの重大な出来事はこの役者たちによってどんなふうに演じられるのだろう? この無味乾燥な日常はどんな演出によって彩られるのだろう

                                                                                    4-161 青嶺瑠璃 - 幻想再帰のアリュージョニスト(最近) - カクヨム