トランプは力づくで「肉体と血」を奪いとる おいしい前菜をつまみながら、アビジット・バナジーは経済学者の「誤った分析や不必要な確信」を嘆く。 「経済学者はもっと謙虚になって、社会に貢献すべきです」 バナジーの最新作『チャーンク』(未邦訳)の書名の由来は、料理の仕上げにひと振りするスパイスを意味するヒンディー語だ。文化資本から贈り物まで、幅広いテーマを網羅したエッセイ集で、コルカタで過ごした幼少時代の思い出が随所に登場する。 この本を書いたのは、「読者に何か役に立つことを伝えたかったからだ」とバナジーは言う。 「難解さやとっつきにくさを省いて、経済学を日常生活に浸透させたいと思っています。そうなれば、より多くの人が経済政策などについて的確な判断ができるようになります」 昨今の経済政策で誰もが懸念するのが、米大統領に就任したドナルド・トランプの影響だろう。バナジーはトランプを、「きわめて巧みなス