滋賀県西部。たっぷりの緑に覆われた比良山地に溶け込むように、濃いオリーブ色をした建物があった。中に入り、2階に上がると、空気がどこかしっとりしている。一定の温度と湿度を保ち、常に空気を循環させているのだという。 びっしりと連なる棚にはトレーが置かれ、パッキング済みの白いブロック状のかたまりが並んでいた。これがテンペだ。 「ちょうど発酵が終わったところです」 ルストノさん(53)がテンペを見せてくれた。日本でおよそ20年、テンペをつくり続けている。 「原料は、大豆と水と、テンペ菌だけ。添加物もなにも入れない。すごくシンプルなんです」 いとおしそうに、テンペの詰まったパックをなでる。傍らで見守っていた、妻の葛本つる子さん(53)が言う。 「シンプルでも難しいんです。とくに発酵中の温度の管理。季節によっても違いますが、31.5~33度の間をキープして、発酵させていくんです。発酵時間は32~36時