ナビを見ると、新幹線の駅まで残り10分ほどだった。僕は、彼が撮ろうとした映画の話を切り出すタイミングを見計らっていた。なぜか気になっていた。それは言葉に置き換えるべき何かが発見できる予感があったからかもしれない。時々、そんなことがある。言葉に置き換えることで、ごく少数かもしれないが、いくばくかの人に働きかける事象がそこに転がっていると感じることが。文章にしたところで、多くの人を感動させるほどのものではないかもしれないし、そもそも感動と表現してしまうと、崩れてしまう何かかもしれない。それを読んだ人の胸中に起こるのは、USBに差して使うタイプの扇風機が作る程度の微風かもしれない。けれど、それはうまく掘り当てられることを待っているのだ。 (上田岳弘『旅のない』講談社文庫、2024) こんばんは。今日、同僚から結婚式の招待状が届きました。開封したところ、思いがけず「当日乾杯のご発声を」とあります。