車を運転する人なら誰でも、行く先に赤い光が見えると工事を覚悟して「あまり待たないといいな」と思うだろう。でもその誘導灯を持つ誘導員に注意を払うことはなく、ほとんど風景のようになっている。 しかし本書を読んで「交通誘導員」を気にするようになると、確かに男女問わず老人と言ってもいい人が、夏の真っ盛り、炎天下のアスファルトの上で真っ黒に日焼けして働いている姿がよく目に留まる。 道路に面している工事現場には、車両の通行や住民の往来などに迷惑をかけないよう、そして工事に支障が出ないように研修を受けた道路交通誘導員が必要である。全国におよそ55万人(2017年末)いる警備員の約4割がこの交通誘導警備員だ。 著者の柏耕一は73歳。出版社勤務のあと編集プロダクションを興し、40年ほど編集やライター業に従事。ベストセラーも出したことがあるようだが、あることで身を持ち崩して会社を清算し、この交通誘導警備員とな