「人生にはときどき、迷子になってしまう時期があります」 この本のテーマは、ここからひも解かれていく。たとえば、仕事で大失敗したり、パートナーから別れを切り出されたり、家族の問題が生じたり......。小さな失敗から自信を失い、微妙なすれ違いから他人を信頼できなくなることもある。さまざまな苦悩を抱える人たちと向き合い、心の声に耳を傾けてきたのが臨床心理士の東畑開人さんだ。 東京の街でカウンセリングルームを主宰する東畑さんの新刊『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』(新潮社)。本書のテーマは、<この自由で過酷な社会を「いかに生きるか」>だという。その大きな問いの答えにたどり着くため、東畑さんは読者をカウンセリングの世界へ誘っていく。読んでいるうちに、まるで自分もセラピーを受けているような感覚になる本なのだ。 「寂しい」と感じるのは成熟の証 ――この新作はどのような人に読んでもらいた