将棋のタイトル戦では第1局が始まる前に、振り駒をして先後を決めます。 現在の作法では、畳の上に白布を敷き、振り駒をする人(多くの場合は記録係)がタイトル保持者側の歩を5枚取り、手の中でよく振って、白布の上にまきます。 表の「歩」が多く出ればタイトル保持者、裏の「と」が多く出れば挑戦者が、第1局の先手となります。 以後、第2局から先後は交互に替わります。 ところで、観戦をする側からはしばしば、こんな声も聞かれます。 「振り駒はしなくて、第1局は『挑戦者先手』と決めておいてもよくない?」 これはごく自然な意見ともいえます。将棋界の古くからの慣例では、ハンディなしの平手(ひらて)を指す場合、上位者の側が後手を持ってきたからです。 しかし現行のタイトル戦番勝負で最も古い、1940年の第2期名人戦七番勝負では、振り駒がおこなわれました。 実は運営側は最初、古くからの慣例に従って、第1局は挑戦者先手と