近年では「公共政策バッシング」と呼ぶべき報道がしばしば行われている.本研究では,公共事業に対するバッシング報道の一例として,豊洲市場移転問題に関する報道を取り上げる.当該事業に関する批判が高まった後,批判の根拠である「豊洲市場の危険性」が専門家により否定されたにも関わらず,批判は継続されたが,この際の論調の(部分的変更を伴う)選択過程の分析を行った.テレビの情報番組及び新聞の報道内容に関する定量的データの分析から,いずれのメディアにおいても「危険性から手続的瑕疵へと論点を移動させた上での批判の継続」という論調選択が一定程度行われていることが示された.またこの過程に関する認知的不協和理論に基づく検討の結果,この論調選択が認知的不協和の低減プロセスとして現出している可能性が示唆された.